個人ラーメン店が大量倒産…吉野家の「ラーメン業界」進出で進む「厳しい二極化」
個人店を圧迫する物価高
こうした背景には、食品をはじめとした物価の上昇、さらに都市部での賃料の増加、また電気料金の値上げなどがある。個人店の場合は後ろ盾もなく、こうした影響を直に受けてしまう。 また、帝国データバンクはラーメン店について「『1000円の壁』が課題とされるラーメン業界では、他業界に比べて値上げが難しい特有の事情も抱えて」いる、とその事情を指摘している。大規模な物流や工場の設置によって安定的な値段での提供が可能なチェーン店に比べ、個人店はきわめて不安定な状況に置かれている。 いわば、M&Aによって大規模化を進めるチェーン店と、厳しい状況で立ち向かわざるを得ない(そして一寸先には倒産の危機がある)個人店の二極化が進んでいる。 「一幻」がそうだったように、ある程度人気の個人店は少しずつ店を増やし、大きい会社による子会社化を経て生き残っていく……という流れが定番のコースになっていくのかもしれない。 昔から「チェーン店が増えて個人店が厳しい」とは言われ続けてきたことだが、データが示すのは、この流れが加速している現状だ。ラーメン店で起こっている流れが他業界でも発生している。後編記事『「雰囲気のいい居酒屋」が日本から消える…飲食業界を苦しめる「消費者の変化」』では、特に厳しくなる業界について詳しく解説する。
谷頭 和希(都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家)