豪華メンバーと語った内田也哉子が 母・樹木希林のようと話す意外な人物 「恥じらいがあり古風なところが…」
「ひょいと乗っかってみようという度胸だけはある」
いざ、話は『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』について。対談の15人が、谷川俊太郎さん、小泉今日子さん、中野信子さん、養老孟司さん、坂本龍一さんほか、職業年齢バラバラの錚々たる人たちなのである。人選の基準について聞くと、 「実は、15人はリストアップしたんじゃなくて、『週刊文春WOMAN』という季刊誌の連載だったので、その都度、今その人にこそ会いたい、という風にオファーしていったんです」 ええっ、まさかのいきあたりばったり! 「自分でも、よくぞ自然とこの色合いになったなと思います。あのとき、あの瞬間でしか出会えない一期一会で。私の人生そのものも、計画性がなくて(笑)。9歳の時に留学したのも『行きたい? 』『行く』で、数週間後に行ったり、結婚もお付き合いもちゃんとせずこうなって。訪れるタイミングに深く考えず、ひょいと乗っかってみようという度胸だけはあるんです。悪く言えば、後先考えないんですね」 ううむ、そういうところはやはりロックンロール。 「はからずも、若い人と接点がない……。一番若い方で中野信子さんが同い年。シャルロット・ゲンズブールさんも少し年上だし、年下がいないんですよね。それどころか、オーバー80の方も多くて」 確かに1番手からいきなり、92歳の谷川俊太郎さんだ。 対談を思い出したのか也哉子さんはとても嬉しそうに微笑んだ。 「大きな大樹の年輪に触れているような――。なにものにもかえがたい時間でしたね」 私も『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』を読み、個人的な感想だが、対談はどれも「人生のゆきあたり」感が漂っていた。もしかしたら、也哉子さんの後先考えない進行が、そう感じられる何かを生んだのかもしれない。
内田也哉子が「恥らいがあって古風。母のよう」と評す人
この本の読み心地は温かくてひんやりとして、ダークで明るい。まさにアンビバレンツだ。読むまで、お名前も知らなかった写真家の石内都さんの対談は、掲載された写真も含め、匂いがくるくらいの強烈なインパクトがあり、写真集が欲しくなった。中野信子さんとマツコ・デラックスさんは、私の知らない一面を垣間見え、これまでの強いイメージに、繊細さが格子模様で見えてくるような感覚になった。 「マツコさん、恥じらいがあって、古風なんですよね。いつも間(あいだ)を取ろうとする。そういうところが母と似ているなと思って。お会いするまでそんな風に思っていなかったんですけど。不思議だなあと」 しかしこの錚々たる面々と1対1で向き合うのだ。自分と立場を置き換え、シンプルに思う。緊張しなかったですか? 「うーん、出会えるワクワク感といいますか。たとえばマツコさんは座った途端、本質的なことをどんどん話してくださるんです。そこにいると、まるで大きな海にぷかぷか浮かんでいる感じ。心地よくて」 大きな海にぷかぷか、の表現を聞き、私は、彼女が出す丸腰感にすべて合点がいった。み、見える。貝のかわりにメモとペンを持ったラッコ姿の也哉子さんが、対話という海にふわふわ漂う姿がありありと目に浮かぶ! ああ、すごく気持ちよさそうである。なるほど、也哉子さんはただただ身を任せ、出会いと言葉によってできる波を楽しむのだ。 「私は、会いたいと思った時点できっと何か、波動的なものが合うんじゃないか、と勝手に信じていて。だから怖い緊張感はないですね。この対談でも、誰しもが欠けている部分があり、それを満たし振り返ることもできる。そのままでいいんだ、と教えてもらいました」 気が付けば15分経ち、インタビューは終了。お話を伺っているうちにだんだん私の情緒がどんどん安定していくという、めったにない現象が起こっていた。あのふんわりした口調と、独特のアルトの声のせいなのか。もしかするとこれが、彼女が言う「波動」なのだろうかも。 早く続きを聞きたい。控室を出て会場に行くと、席はもうぎっしり埋まっている。 トークイベントまであと10分、楽しみ!
田中 稲