共産党含む「政治勢力」からの独立不可欠 軍事忌避の日本学術会議「研究開発を制約」
「(日本学術会議のような)ナショナルアカデミーは、国家権力や時の政治勢力から独立していることが必要不可欠だ」 【表でみる】日本学術会議を巡る経過 政府の有識者懇談会が学術会議の在り方に関する報告書をまとめたことを受け、22日に開かれた学術会議の総会で、会員の1人が強調した。 「時の政治勢力」には政府・与党だけでなく、共産党をはじめとした野党も含まれる。この点もふまえ、光石衛会長は総会後の記者会見で、学術会議が勧告や提言、声明といった「助言機能」を果たす上では独立性が必要との認識を示した。 学術会議は、昭和24年の設立当初から革新陣営の影響を受けてきたとされる。それでも吉川弘之会長(平成9~15年)の下で改革が図られ、一面的ではない〝俯瞰(ふかん)的な議論〟を通じて各会員の多様な見解をまとめるといった方向性が示された。 しかし、29年には当時の会員だった法政大の杉田敦教授が中心となり声明を発表。「軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由と緊張関係にある」とし、安全保障に関わる科学研究を忌避するよう求めた。これにより、安全保障に関わる先端技術の研究開発が制約されたとの声が大学の研究現場などから挙がった。 同声明を発出後、ロシアがウクライナを侵略。無人機や人工知能(AI)をはじめとした先端技術が、戦争の成り行きを決めかねない現実が改めて明白となった。日本周辺でも安全保障環境が厳しさを増す中、技術的な優位の確保は喫緊の課題となっている。 こうした国際情勢は、安全保障に関連する科学研究を忌避する声明には反映されていない。今回の報告書を機に、野党側を含む「時の政治勢力」からも独立した形で助言機能を発揮できるかが注目される。(小野晋史)