日本で実現も夢じゃない? アイスランドで「週休3日制度」が大成功した理由
何が週4日勤務を可能にしたのか
では、アイスランドで週4日労働がうまくいったのはどうしてだろうか? アイスランドでもかつて女性は、家事と仕事を両立するためにパートタイマーとして働くのが一般的だった。しかし2019年の制度改正は、男女の雇用機会の平等を大幅に向上させることとなった。 週当たりの労働時間が短縮されたことで、パートタイムで36時間働いていた人々(おもに女性)も、同じ労働時間数で「フルタイム」として働くことが可能になったからだ。そしてフルタイムなので、以前と同一の労働時間でありながら賃金や待遇、労働条件面は改善される。 こうした変化の恩恵は、多くの男性も受けている。以前よりも時間の自由度が高まり、結果的に子供の生活にもっと関わることができるようになったのだ。 私の夫のトゥミは、官庁に勤めている。初めのうちは毎週金曜日を午前勤務のみにしていたが、すぐに月 2 回の金曜日は完全に休むことに決めた。休みの金曜日は遅くまで寝て、キッチンを掃除しながらハトの愛好家仲間と長電話をし、それから書店に出向いて面白そうな本を探しに行く、という生活を楽しんでいる。 息子を学校に迎えに行く時間に夫が家にいてくれるのもありがたい。それ以外の日は私が息子を迎えに行くから、隔週金曜日の午後は友人と落ち合っておしゃべりしたり、ボランティア活動をしたり、一人でプールに行ったりする自由を持つことができる。燃え尽き症候群にならないことを願う疲れた教師にとって、これはまさしく画期的だった。 休日の旅行を前に感じるあのハッピーな高揚感は、ほぼ誰もが経験していることだろう。ウキウキして、なによりもすべてから解放された自由さがある。いま夫は月2回、その幸福感を味わっている。 私は中学校の教員だから、週4日労働制には該当しない。学校教員の仕事は依然として週40時間のままなのだ。といっても、実際に教室で教える時間は週26時間のみ。残りの時間は会議や採点、授業の準備だ。授業以外の時間については自由裁量が認められているため、少し長めに働く日を入れることで、夫が休みの金曜日の午後は、こちらもそれに合わせて休みをとることはできる。 私の学校の管理職、用務員、清掃員、厨房職員はほかの組合に所属していて、彼らもいまは週当たりの労働時間が短縮されている。そして、金曜日の午後の授業が少なくなるよう時間割も変更した。教員は皆満足しているし、生徒からの苦情もない。 ただ、所属する企業や機関によって要求されることはそれぞれ違うし、当たり前だが、誰もが週に1回正午に店を閉められるわけではない。職場によっては、コーヒーブレイクやランチの時間を削って対応するケースもある。また、仕事の進め方や、どの会議を短くできてどの会議がオンライン開催可能か、メール通知のみにできる会議はどれかといったことも見直す必要がある。 もちろん、従来通りの労働時間に戻りたいと望む人はいるし、早く退社しても仕事が山積みという場合はかえってストレスになることもあり、問題がすべて解決したわけではない。 このあたりについては決して容易に解決できる問題ではないし、すべての業務に適用できるわけでもないが、質的および量的データを見る限り、勤務時間を減らした人のほとんどがそれを気に入っていることが示されている。仕事への満足度が向上し、ストレスは軽減され、仕事中の充足感も高まっているのだ。 生産性やサービスの提供が損なわれるという懸念はある。だが実際は、これほど真実とかけ離れた懸念もないのでは、というくらいに程遠かった。大規模調査の結果では、生産性やサービスの提供は以前と変わらないか、改善さえしていることが明らかになった。ときには長いコーヒーブレイクを削ったり、仕事の優先順位を変更したりしただけで解決したケースもあった。 大手自動車ディーラーで働く友人のバラは、顧客サービスは維持したまま労働時間を短縮する方法について従業員が知恵を出し合った経緯を話してくれた。 オフィスワーカーの場合、毎日早めに仕事を終えたり、毎週半日休みをとったり、2週間ごとに丸一日の休みをとったりできる。整備士の場合は、シフト形態を変更しても以前と同数の車両の修理を遅延なく完了している。バラによると、従業員は労働時間の短縮に満足しており、上司を含め、誰も以前のやり方に戻るつもりはないという。