オウム真理教に「牙」は残っているか 今も続く公安調査庁の検査、事件の教訓は
サリン事件に加え、リンチ殺人や「温熱療法」と称して熱湯風呂に何度も入らせ死亡させるなどの組織犯罪を繰り返していたオウム。地下鉄サリン事件の2日後の7年3月22日、警視庁などが一斉強制捜査に踏み切り、5月までに麻原元死刑囚らを逮捕した後も、単発で事件を繰り返していた。
16年には、オウム元信者のグループのメンバー4人が、修行と称して竹刀で別の女性メンバーの背中をたたく集団暴行を行い死亡させたとして傷害致死の疑いで逮捕されている。
■教祖がいた頃とは…
公安審は今年1月、オウムの後継団体の危険性を改めて認定し、8回目の観察処分期間の更新を認める決定をした。昨年3月からは、資産などの報告内容が不十分だなどとして、施設の使用や金品の受領を禁じる「再発防止処分」の対象にアレフを指定している。
オウムの後継団体はアレフのほか、「山田らの集団」「ひかりの輪」と3つに分裂。ただ、地下鉄サリン事件の時点で1万人を超えていた信者数は1650人(令和6年現在)となっており、元検察官は「麻原元死刑囚がいた頃と比べると、危険性の認定には疑問符がつく」と話す。
ここ数年、信者が悪質な犯罪に手を染めたとして起訴されるケースも減りつつある。
令和3年にはアレフの活動拠点として使う横浜市のマンションを住居用と偽って借りた女性が逮捕されたが、不起訴に。今年1月にはアレフの信者らを住まわせる目的を隠して名古屋市内のマンションを借りた信者らが詐欺の疑いで逮捕されたが、やはり不起訴となっている。
この元検察官は「狂信的集団の暴走を許した過ちの轍(てつ)を踏んではなるまい。ただ、将来の危険性は冷静に判断すべきだ。そこまで含めてこそオウム事件の教訓と言えるのだから」としている。