【深セン・日本人男児刺殺事件】上川外相、警備費増強も現地駐在員が落胆する警備会社「人民解放軍OBだけ」の“実情”
中国・広東省深セン市で日本人男児が刺殺された事件は、大きな波紋を広げつつあるようだーー。 【写真あり】中国の警備会社は人民解放軍OBが務めている 「事件が起きたのは9月18日のことでした。深セン市の日本人学校に、親と一緒に登校していた10歳の男子児童が、44歳の中国人の男に刃物で腹部を刺されました。児童を刺した男は、その場で警察によって身柄を確保され、犯行を供述。地元警察の発表では、男は定職に就いておらず、2019年には公共の秩序を乱す事件を起こすなど、複数の前科があったといいます。一方、病院に搬送された男子児童は、治療を受けていたものの、19日に亡くなりました」(社会部記者) 事件がこれほど注目を浴びたのは、日本人が被害者となった、似たような事件が6月にも起きているからだ。 「江蘇省蘇州市で、日本人学校のスクールバスが刃物のようなものを持った中国人とみられる男に襲われ、日本人の親子2人が切りつけられる事件が起こっています。親子の命に別状はありませんでしたが、日本人が狙われる事件が続いていることから、背景に中国の愛国教育の影響や、SNSでの反日投稿が広がっていることがあるのではないか、と指摘する声もあります」(同前) こうした事態を受けて、上川陽子外相は2024年度の予算から4300万円を拠出し、中国に12校ある日本人学校の警備強化費に充てると発表した。また、米ニューヨークでの国連総会に出席した上川外相は、同地で王毅(ワンイー)共産党政治局員・外相と会談し、同問題について話し合っている。 「異例の対応といえますが、上川外相も、立候補している総裁選の最中ですからね。目下、上川外相に当選する見込みはありませんが、世論へのアピールになると考えたんでしょう。外務省の今年度の総予算は7400億円超。そのなかの4300万円ですから、むしろ少ないくらいです」(国際部記者) “アピール”のための王毅外相との会談だが、不発に終わってしまった。 「上川外相は、事件を『国民交流に深刻な打撃を与える事態』として、SNSなどで深刻化している反日的な投稿への取り締まり強化を求めたものの、『日本側は冷静に対応し、政治化や拡大化を避けるべきだ』と、逆に中国側にくぎを刺されてしまいました。さらに現在、福島第1原発の処理水の海洋投棄についても、追加的なモニタリングまで約束させられる始末。いったい何のためにニューヨークまで行ったのかわかりませんね」(同前) また、外務省が警備の予算をつけたところで、本当に現地で暮らす邦人にとって安全になるのか、疑問が残る。 「6月に起きたスクールバスでの事件では、子どもたちの案内を担当していた中国人女性が、児童をかばって亡くなっています。女性には感謝以外ありませんが、もちろん彼女は公安当局と関係があります。要は監視員。公安が犯人を迅速に取り押さえることができたのも、中国当局の連携あってのことです」 と語るのは、北京の現地校(公立学校)に子どもを通わせているという、日本企業の駐在員だ。さらに、こうため息をもらす。 「たとえば、学校が日本の警備会社で相応の経歴のある人間を派遣させるのは無理でしょうね。ビザが下りませんからね。当然、日本人学校の警備員は、中国の警備会社からやってくることになります。しかし、中国で警備会社というと、基本的には人民解放軍のOBが務める会社しかないんです。彼らの武装は最低限ですから、文字どおり、体ひとつで襲撃に対峙することになります。 さらに、費用もかかるでしょう。通学バスに乗せたり、学校に駐在させたりするとなると、12校分をわずか4300万円で賄うことはとてもできません。本気でやるには予算が1ケタ足りないという印象です」 再び日本人への“ヘイトクライム”が起きれば、日中関係の悪化は避けられないーー。