大統領選と同じ日、アメリカ9州で「大麻」合法化を問う住民投票
現地時間8日に実施される米大統領選挙。実は同じ日に全米の9つの州で州法の改正をめぐって、それぞれの州で住民による投票が実施される。大統領選で大きな争点となっている格差問題や移民問題に関する投票ではなく、投票によって州内の規制が大きく変わる可能性が浮上したのが大麻の所持と使用だ。中西部のコロラド州、西海岸のワシントン州とオレゴン州では大麻の販売や栽培まですでに合法化されており(オレゴン州では販売と栽培は医療用目的に限定されている)、さらに9州で大麻の使用や販売が合法化された場合、アメリカ国内における大麻の立ち位置が大きく変わる転換点となるかもしれない。 【写真】高樹沙耶容疑者逮捕、彼女が訴えていた医療用大麻ってどういうもの?
国レベルでは違法薬物になって80年
大麻の合法化を問う投票は9州で実施され、カリフォルニア、アリゾナ、メーン、マサチューセッツ、ネバダの5州では21歳以上であれば、嗜好品として少量の大麻を所持・使用することを合法とすべきかどうかが、住民による投票によって決定される。また、アーカンソー、フロリダ、モンタナ、ノースダコタの4州でも医療目的での大麻使用を合法化すべきかどうかの投票が行われる予定だ。カリフォルニア州ではすでに医療目的での大麻使用は合法となっており、嗜好品としての大麻合法化を問う「住民投票事項64」が可決された場合、大麻は酒やたばことほぼ同じ部類に入る。生産と販売に関しては州から認可された者だけが行える仕組みで、供給量にも制限が設けられ、販売者と生産者は州税を支払わなくてはいけない。
大麻合法化をめぐる世論がアメリカ国内で大きな変化を見せたことが、それぞれの州で住民投票が実施されるきっかけになったと指摘する声は多い。ヒッピー文化が若者の間で支持された1970年代でも、アメリカ国内の世論は大麻使用に対して決して肯定的ではなく、米PBS(公共放送サービス)は当時のアメリカで行われた世論調査で大麻合法化を支持したのはわずかに12パーセントにすぎなかった。しかし、ギャラップ社が最近行った調査では、全米で大麻合法化を支持する声は61パーセントにまで達しており、この40年で世論に大きな変化が生じている。女性初の合衆国下院議長として現在も民主党で大きな影響力を持つナンシー・ペロシ下院議員(カリフォルニア州選出)は4日、ロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対し、「大麻合法化をめぐる住民投票では、賛成票を投じようと考えている」とコメントし、話題を呼んだ。 アメリカで大麻が違法薬物に認定されてから約80年となる。連邦法では現在でも大麻の生産や販売はおろか、所持に対しても犯罪行為として規定されているが、現実にはそれぞれの州の法律が尊重されることになるため、大麻の合法化がさらに広がりを見せ続けた場合には大麻に関する連邦法の変更を求める声が高まる可能性もある。アメリカ政府は薬物の乱用を防ぐ目的で1970年に規制物質法を策定し、薬物に対する規制の度合いを5段階評価している。大麻はヘロインやLSDと同じ「スケジュール1」に分類されており、いかなる場合でも使用が禁止されている。ここに州政府と連邦政府の法的な歪みが存在するのだが、仮に連邦法を改定しようとする場合には、医療団体からの研究データをFDA(食品医薬品局)やDEA(麻薬取締局)が精査する必要があるが、まだそこまでの動きはない。