野村克也が語る「金田正一」
キャッチャーは“カベ”。サインは無視された
まぎれもない大投手だった金田正一/写真=BBM
10月6日、元巨人投手の金田正一さんが亡くなった。カネさんの20年に及ぶ現役生活で挙げた通算400勝は、不滅の記録である。 持ち球は、ストレートとカーブの2種類のみ。とはいえ、カネさんのストレートは、当時スピードガンがあったなら150キロ~160キロを計時したのではないかと言われる快速球だった。 それ以上に私が驚いたのは、カーブである。私たちのころは『ドロップ』と呼ばれており、その名のとおり弧を描くようにドローンと落ちる軌道が一般的。ところがカネさんのカーブはブレーキが効いており、キュキュッと高速で曲がり落ちる。バッターにしてみれば自分のアゴのあたりに球が来るので、一瞬、完全なボール球に見える。しかし、そこからストンと落ちて、最後はストライクゾーンのド真ん中ぐらいでミットに入るから、審判のコールは「ストライク!」。あれにはバットが出なかった。 カネさんは、いかにも“ピッチャー”らしい性格だった。カネさんからしたら、キャッチャーはまさに・・・
本文:1,906文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
週刊ベースボール