「一発屋芸人」が減った3つの理由。テレビの衰退とともに「滅びていく運命にあるのかもしれない」
賞レースと『おもしろ荘』だけが無名芸人のテレビ出演チャンス
最近の若手芸人の大半は、漫才師であれば『M-1グランプリ』を、コント芸人であれば『キングオブコント』を第一の目標にする。なぜなら、彼らが世に出るためのチャンスがそのような賞レース番組しかないからだ。 賞レースで優勝したり、決勝に行って活躍したりすることができれば、そこからほかの番組に呼ばれる機会も増える。 しかし、何も実績を残していない芸人は、どんなに面白くてもテレビに出るきっかけそのものをつかむことができない。だから、若手芸人は問答無用で賞レースに挑むしかない状況に陥っている。 今の時代に賞レース以外で若手芸人が世に出られる唯一の機会と言えるのが、毎年1月1日に放送される『ぐるナイ』の特番『おもしろ荘』(日本テレビ系)である。 ここでは毎年、新しい若手芸人が数組出演して、ナインティナインらの前でネタを披露する。最近でも、やす子やぱーてぃーちゃんがこの番組をきっかけにブレークを果たしている。 この番組は正月特番ということもあって注目度は高いし、何組かの売れっ子を輩出している。しかし、これは原則として年に一度の特番であり、出られるのもわずか組前後という狭き門である。 無名の芸人が世に出るチャンスがいくつかの賞レース番組と『おもしろ荘』しかないというのは、厳しい状況であるのは間違いない。
ネタで演じる“キャラ”の仮面をすぐに剥がされる
2つ目の理由は、芸人がすぐにキャラをはぎ取られてしまう風潮があるということだ。『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』はネタ番組なので、そこに出る芸人はネタを見せるだけであり、トークをすることはない。 どんな性格か、どんなことを考えている人なのか、といった素顔の部分を見せる必要はなかった。そのため、彼らは1つのキャラクターを貫いて、内面を見られない状態で世に出ることができた。 しかし、最近のバラエティ番組はトークが主体であるため、駆け出しの芸人がすぐにその素顔を暴かれてしまう。『ゴッドタン』(テレビ東京系)に最初に出たときのEXITがその典型だ。 髪を染めてギャル男のようなチャラさを売りにしていた彼らは、初めて出たバラエティ番組でいきなり「実は真面目」という素顔を暴かれてしまった。 それは、番組の性質上、避けられないことではあったのだが、そういう扱いをされると、芸人が1つのわかりやすいキャラクターを用意して、それを広めることができなくなってしまう。 つまり、「一発」が大きく打ち上がる前に別の角度ですぐに分析・解体されてしまうため、純粋な一発屋芸人が育ちにくくなっているのだ。 EXITの2人はキャラクターの裏にある本人たちの素顔に近い部分でも人を惹きつける魅力を持っていたため、その後も生き延びることができた。 ただ、これはまれなケースである。現在の環境では、キャラクターが独り歩きして爆発的に売れるようなパターンが生まれにくくなっている。