プレゼン中、プロジェクターが故障して一時中断…。プロに聞く「気まずい空気」の対処法
大事なプレゼンに限ってプロジェクターが故障したり、マイクの音が出なかったり、急なトラブルに見舞われる……。 【写真】スピーカー界のアカデミー賞を受賞した信元さんの「伝える力」とは トラブルが起きたとき、どうしたら良いか分からず固まってしまう方も多いのではないでしょうか。 「トラブルはチャンス!」 そう力強く教えてくれたのは、NYでプロスピーカー&戦略コンサルタントとして活躍するリップシャッツ信元夏代さん。 信元さんは「日本生まれ日本育ち」にもかかわらず、国際スピーチコンテストで日本人初の地区大会優勝5連覇を果たしている、まさにまさに伝えることの「プロ」。 さらに2024年、スピーカー界のアカデミー賞とも言われる秀逸なエリートスピーカーにのみ与えられる「CSP®」(Certified Speaking Professional)の称号を獲得しました。CSPを保持しているのは世界で数百人のみで、日本人としては初の快挙です。 そんなプロスピーカー信元夏代さんによるFRaU web連載「伝え方を鍛える」(毎週月曜更新)では、日々のコミュニケーションの悩みを取り上げて、今日から使えるメソッドをでお伝えしていきます。 第2回目は「プレゼン中、プロジェクターが故障して一時中断……。気まずい空気の対処法は?」をテーマに、今日から使えるテクニックを教えていただきます。
トラブルが起きたとき、何か言った方がいいの?
「エレファントインザルーム」という言葉をご存知ですか? 部屋の中に巨大な象がいて明らか誰の目にも入っている状況なのに、そのことをあえて話題にしない、違和感を抱いているのに見て見ぬふりをする、という状況のことを言います。 ビジネスの場でトラブルが起きたときって、緊張感や「どうするの、どうするの」って感じが伝わってしまうんですよね。まさに「エレファントインザルーム」の状態。この状態は聞いている相手にも緊張感を与えてしまいます。 ここで考え方として提案したいのが、「トラブルはネタの元」ということ。チャンスなんです。 このチャンスとどう活かすか、具体的な方法を2つご紹介しますね。 ---------- 1. ユーモアに変える つまり、緊張と緩和です。 プレゼン中、建物の電気が消えちゃったときは「真っ黒な中で話すのもなかなか面白いですよね」とか、一言あるだけで緊張感が緩和され、少し笑いが起こる。日本のプレゼンはきちんと感が強く、「ちゃんとしなきゃ」と思う方も多いと思いますが、楽しくないプレゼンはできれば聞きたくないですよね? だからいかにトラブルをユーモアに変換できるかが大事なんです。 ここで注意してほしいのが、ユーモアとジョークは違うということ。ジョークが「笑い」を目的にするのに対し、ユーモアは「笑いを通じて学びを深める」ということです。「ここで一発笑わせておこう」とジョークを言ったりすると、次に繋がらず冷めてしまったりするので、プレゼンに繋がるユーモアであることが大事です。 私もマイクがつかないトラブルに見舞われたことがあって、解決を試みたんですがどうしてもつかないときがありました。そのときは「では大きな声で話しますね!!」と会場に呼びかけて地声でチャレンジしました。もちろんアドリブです。大きな地声で話すことで「エレファントインザルーム」の状態からフワッと緊張が緩和されて、会場全体の空気が変わったんですよね。 ---------- ---------- 2. 聞き手に呼びかける プロジェクターが壊れた場合だけでなく、マイクが故障したり、会場の電気が消えたりなど……そういう場合、すぐに話を進めるのもなかなか難しいと思うので、その時間を「ちょっとここで今までお話したことを確認しましょうか」などレビューをする時間にしたり、「ここまでのところで質問ありますか?」と質疑応答をするなど聞いている方に呼びかけてみるというのも一つの方法です。インターアクティブな時間を作ることにもなります。 ---------- すぐに使える対処法を2つお伝えしましたが、トラブルの一番の対処法はとにかく準備をすること。 万が一プロジェクターの故障が戻らなかったとき、スライドなしでも話せる準備をしておくことが大事です。日本はプレゼン資料に内容をモリモリに盛り込んでそれに頼って読んでしまうことが多いと思うんです。そうなると完全に主役はパワポになっちゃっているわけです。 スピーカーはガイド役、伝えるメッセージを引き立てるものが資料。そういうつくりをしておくことが必要です。資料も徹底的にそぎ落として、自分の言葉でメッセージを伝えられるようにすることで相手には伝えたいことが伝わり、急なトラブルに対して焦らずに済みます。