SNSトラブル 命脅かす中傷、迷惑行為…「社会では赦されない」のにネット上で起きてしまうのはなぜ 高校生が考えた
田川高校(塩尻市)の1年5組約30人は情報科の授業で、情報技術の発展に伴い社会で起きているトラブルなどの問題について学んだ。SNS(交流サイト)を巡るトラブルに関する信濃毎日新聞の記事を読み、「この問題がなぜ赦(ゆる)されないのか」「どんな怖さを生み出しているのか」について考えた。
「道徳心が失われてしまう」 生じる人権侵害や風評被害
「Xの怖さ いま一度考えて」。生徒一人一人のパソコン画面に、言葉の一部が隠れた信毎の読者投稿欄「建設標」の見出しが表示された。各生徒が使うタブレット端末には、SNSでの否定的な投稿が店や人に悪影響を及ぼす懸念をつづった建設標の本文も映し出された。 担当の先(さき)皇太教諭(28)が「Xに入る言葉を考えて、記事の見出しを完成させてください」と呼びかけると、生徒たちは「SNS」「情報社会」などとプリントに記述。先教諭はXに「ネット社会」と書かれた実際の見出しを示した後、「情報社会の怖さとは一体どのようなものなのか」と、問いを設定した。 生徒たちの端末には、大手回転ずしチェーンの店舗で客による迷惑行為の撮影動画が相次いでSNSに掲載された問題を扱った記事や、岡山市内の建設会社でベトナム人技能実習生が日本人従業員から暴行を受けた動画に関する1面コラム「斜面」など四つの記事が映し出された。 生徒は記事を選び、問題点などをプリントに記述。「なぜ赦されないのか」との設問では「店舗への風評被害になるから」「人権の侵害に関わるから」と書き込んだ。 先教諭は普段の社会生活では思いやりやルールを考えて過ごしているが、ネット上では赦されないことが行われていると説明。「赦されないことが無視された結果、どんな怖さを見いだしたのか」と投げかけた。パソコン画面には、フジテレビのリアリティー番組に出演したプロレスラー木村花さん=当時(22)=が2020年、放送後にSNSで相次ぐ誹謗(ひぼう)中傷を受けて死去したことに関する記事が映し出された。 生徒たちは記事を読み、授業の問いの「情報社会の怖さ」について考えた。「日常では普通に持っていたはずの道徳心が失われてしまう」「相手を考えない言葉で、人の命を奪ってしまうなどの怖さがネットにはある」。それぞれが答えを書き込んでいった。 先教諭は最後に「公開性」や「記録性」といった情報技術の特性を知り、「道徳的な認識」を持つことでトラブルを回避できるかもしれないと説明。授業を締めくくった。 授業後、須山竜暉(たつき)さん(15)は「インターネットやSNSには利点もいっぱいあるが、デメリットもあり、使い方次第だと思った」。関沢流海(るか)さん(16)はSNSを利用した際に否定的な投稿も目につくと指摘し「人の命が奪われてしまうということが一番悲しい。自分も使い方に気をつけたい」と話した。