SNSトラブル 命脅かす中傷、迷惑行為…「社会では赦されない」のにネット上で起きてしまうのはなぜ 高校生が考えた
記者の思いが生徒の学びに
先皇太教諭の話 今回の授業は、情報社会に関する諸問題を取り上げる新聞記事を教材に使い、生徒に問題の概要を捉えさせるとともに、なぜその問題が「赦(ゆる)されない」のかを考えさせました。 授業で感じたのは、記者の「伝えたい」という思いが生徒の「学びたい」につながること。プロレスラーの女性がSNSでの誹謗(ひぼう)中傷を苦に自殺した問題を報じる記事で「匿名の中傷木村さんに集中 『テラスハウス』出演メモ残し死亡」との見出しにはインパクトがあり、記者の思いが伝わります。これが、生徒を記事から「学びたい」「知りたい」という姿勢にしてくれたのではないかと思います。 新聞活用の利点は、主体的な学習との親和性の高さ。生徒が自ら学ぶ学習の実現がうたわれる現在、新聞記事の活用は極めて有効な仕掛けになると考えます。
道徳的な意識を持つ大切さ
田川高校の先皇太教諭は、1年生の情報1「情報技術が社会に及ぼす影響」の単元で、情報を発信したり情報技術を活用したりする際に道徳的・倫理的な意識を持つことの大切さを学ばせました。資料の示し方として、事例を知らせるときは生徒のタブレット端末で共有し、しっかり考えさせたい記事は印刷して配りました。 【ポイント1】授業の最初に、SNSの書き込みを心配する信濃毎日新聞への投書をタブレット端末に提示。見出しの一部を隠して記事を生徒に読ませ、隠れた部分に入る言葉を予想させました。先教諭は「ネット社会」が入ることを説明。ネット社会のトラブルの実態を調べて情報社会の怖さを考えるという、この授業の学習課題を明確にしました。 【ポイント2】先教諭は次に、四つの新聞記事を生徒のタブレット端末に示し、ネット社会でどんなトラブルが起きているかを理解させました。記事の見出しは「回転ずしで悪質行為拡散」「授業以外でネット利用 小学生の5割超スマホで 依存自覚の中高生も増」などです。記事を読んだ生徒は学習カードに「自分を規制できないこと」「迷惑をかけていることを自覚できない」とトラブルの背景を記入。道徳的な意識を持つことが大切だと気づきました。 【ポイント3】授業の最後に、記事も添えた学習カードを配りました。記事はSNSの匿名の中傷で女性が自殺したという内容です。ある生徒は記事の怖さを「多くの人が暴言を書き込んだことが赦(ゆる)されない」「毎日誹謗(ひぼう)中傷され、そのことが対処されず無視され続けた」と記入。情報社会の怖さを「普段あるはずの道徳心が無くなること。さらに、自分の行為で誰に迷惑がかかるか考えられなくなること」とまとめました。 (信濃毎日新聞社NIEアドバイザー 岡本力)