東京科学大学の創立記者会見で笑顔を見せる大竹尚登理事長（右）と田中雄二郎学長＝1日午後、東京都目黒区（松井英幸撮影）

少子化による18歳人口の減少に伴い、各大学が経営資源の効率化などを模索する中、1日、新たに発足した東京科学大。専門家は、同大が今後の大学統合の機運の高まりに向けた「試金石」になると指摘する。 【写真】東京科学大学の銘板の除幕に臨む大竹尚登理事長と田中雄二郎学長 「統合は苦労の連続。今日を迎えたのは高みを目指す思いがあったから。これから続くかもしれない大学統合の参考になればいい」 東京科学大の田中雄二郎学長は1日の記者会見で、こう述べた。 近年、国立大学の統合は増えているが、法人のみの統合が目立つ。追手門学院大学の倉部史記客員教授によると、大学の統合は、法人が複数の大学を運営する形で統合する「アンブレラ方式」と、法人と大学ともに統合して1法人1大学となるケースに分かれる。 1法人1大学では、統合する大学間で競合分野が少ないなどハードルも高い。ただ、いずれのケースでも人口減少で市場が縮小しているため、「経営母体として法人の競争力を高める必要性に迫られている」と倉部氏はいう。 文部科学省の推計によると、令和5年に63万人いた大学入学者は22年には51万人程度に減少し、現在の定員の8割程度しか埋まらなくなる。 このため一部の大学の撤退や統合は避けられないが、統合には経営資源の合理化や競争力強化による資金獲得といったメリットがある一方、大学が持つ歴史や運営方法の違いなどで統合後の摩擦も懸念される。 倉部氏は「大学側には生き残りをかけた危機感があるが、統合の効果が分かるのはこれから。今回の統合は試金石になるだろう」としている。（楠城泰介）