白岩優奈「スケートの世界に帰ってきてよかった」 けがや休養を経て、ラストの全日本へ
アルバイトでスケート以外の世界を知る
学業に専念し、講義がない時間帯にホテルの受付業務や放課後デイサービスのアルバイトを始めた。スケート以外の世界があることは知っていたが、子供たちとの交流などが新鮮で楽しく感じた。 今まで自分からスケートを取ったら何もないと思っていたが、実際にスケート以外の世界に触れることでスケートだけに執着しなくていいと思えるようになり、気が楽になった。 1年間の休養を経て、「不完全燃焼したままスケートから離れてしまうと絶対に後悔する」と思い、ラスト2シーズンは学業とスケートの両立に励むと決めた。大学ではアジア文化を学び、周りには白岩と同じく部活に励んでいる学生もおり、刺激になっているという。 2023年2月に練習を再開した日は氷に足がついている感覚がなかったり、スピンで目が回ったりと大変な滑り出しだった。 8月のげんさんサマーカップや全大阪Ⅱ選手権(オール大阪)などの地方大会で少しずつ試合勘を取り戻していった。今までできていたものができなくなっていたり、頭ではイメージできていても実際にやってみると身体がついてこなかったりと、もどかしさもあったが、めげずにコツコツと努力を積み重ねていった。 本格的なシーズンに入り、全日本の出場がかかる西日本選手権では、今までに感じたことがないほどのプレッシャーに押しつぶされそうになっていたが、なんとか滑り切って全日本への切符を獲得し、再び大舞台に帰ってくることができた。全日本の会場ではたくさんの観客が白岩の名前が入ったバナータオルを振っていた。それを目にすると、いろいろあったもののスケートの世界に帰ってきてよかったと心の底から思った。
選手としては今年まで、春からは社会人に
来春からは一般企業で働くことを決めており、選手としては今年いっぱいをめどに終えようと考えている。入学当初に描いたものとは全く違うスケート人生を送っているが、今は心身ともにいい状態で練習ができているという。 白岩がかつて得意としていた3回転ルッツー3回転トーループのコンビネーションを昨シーズンは一度も成功することができなかったが、「今シーズンこそは」と挑んだ近畿選手権では見事に成功させた。残る年内の大会でも全て成功させるのが目標だ。 今シーズンのSPは吉野晃平さん振り付けの「タイタニック」で、芯の強い女性を演じる。鈴木明子さん振り付けのフリー「The Mission」では、壮大なメロディーに合わせ、特にコレオシークエンスを体全体を使って曲を表現できるように練習に取り組んでいる。 今年12月にある全日本は地元の関西で開催されるため、出場したいという気持ちが特に強い。たくさんのバナータオルの応援を糧に、18年間続けてきたスケートをやりきったと思えるような演技を全日本の舞台で見せてくれることを楽しみにしたい。
澤田亜紀