トランプ次期米大統領、最高裁に量刑言い渡しの差し止め求める 「不倫口止め料」裁判
アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が元不倫相手への口止め料支払いを隠すため業務記録を偽造したとして重罪34件について有罪評決を受けている裁判で、トランプ次期大統領は8日、量刑の言い渡しを一時停止するよう連邦最高裁判所に求めた。言い渡しは10日に予定されている。 量刑言い渡しをめぐっては、トランプ次期大統領はすでに、ニューヨーク州の地方裁判所と高等裁判所に延期を申し立てたが、いずれも却下されている。 トランプ次期大統領の弁護団は、有罪評決を不服として控訴している間、量刑言い渡しが自動的に停止される資格が次期大統領にあるかどうかを検討するよう、最高裁に求めている。 量刑の言い渡し手続きの継続は、「重大な不公正と、大統領職の制度への害」を引き起こすだろうと、弁護団は主張している。 次期大統領については昨年7月に別の事件で、連邦最高裁が「大統領の公務は原則として刑事免責される」と判断。トランプ氏側はこの判断が口止め料をめぐる事件にも適用されると主張しており、免責に関する疑問が解決されるまでは、手続きを予定通り進めるべきではないとしている。 弁護団は、「現職大統領は任期中の刑事訴追から完全に免責される。これが、アメリカの次期大統領にも適用されるのか」検討するよう、裁判官に求めている。 また、トランプ氏のホワイトハウス復帰が間近に迫っていることを理由に、裁判手続きを保留にすべきだとも主張している。 最高裁はトランプ氏側の申し立てを受け、マンハッタン地区検察に対し、9日朝までにトランプ氏側の申し立てに対して意見を出すよう求めた。 マンハッタン地区検事のアルヴィン・ブラッグ氏は、短い声明の中で、「法廷文書で応じる」とした。 その後、トランプ氏の弁護団は、ニューヨーク州に対しても、量刑言い渡しを停止するよう要請した。 ニューヨーク州地裁の陪審団は昨年5月、トランプ前大統領が「不倫口止め料」をめぐって業務記録に虚偽記載をしたとして、34件の罪状すべてについて有罪とする評決を出した。アメリカの大統領経験者が刑事裁判で有罪とされたのは初めてだった。 陪審員12人は2日間の評議の末、全員一致で前大統領を有罪とする評決に達した。 前大統領が性的関係のあったポルノ映画スター、ストーミー・ダニエルズ氏に13万ドルを支払い、それを隠ぺいするために事業記録を改ざんしたと、陪審は認めた。 この支払は、2016年大統領選の投票日の数日前に行われていた。マンハッタン地区検察は、選挙で不利になりうる話を有権者に隠したとして、選挙妨害に等しい行為だと主張した。 トランプ氏はダニエルズ氏との関係や不正行為を否定している。 量刑は当初、大統領選の最中の昨年7月に言い渡される予定だった。ニューヨーク州地裁のホアン・マーシャン判事は同年9月に延期することを認めた。その後、ニューヨーク州地裁の裁判長は、大統領選後の11月26日に延期するとした。 最終的には、ニューヨーク州検察が、トランプ氏の大統領任期が終了するまで延期する意向を示した。 弁護団は、トランプ氏の大統領選勝利を理由に、有罪評決の無効を申し立てていたものの、ニューヨーク州地裁のマーシャン判事はこれを棄却した。 マーシャン判事は3日、トランプ氏の大統領就任前の10日に、量刑を言い渡すとの決定を出した。ただ、禁錮刑も保護観察も罰金も科すつもりはなく、「条件を伴わない刑罰の放免」を言い渡すつもりだと明らかにした。 ■複数の法廷闘争が進行 弁護団は、トランプ氏が絡んだ2件の連邦刑事事件で捜査を指揮し、トランプ氏を起訴した、司法省のジャック・スミス特別検察官がまとめた最終報告書が公開されるのも阻止しようとしている。 スミス特別検察官は、2020年大統領選の結果を覆そうとした疑いでトランプ氏を起訴したほか、トランプ氏が退任後に機密文書をフロリダ州の私邸に保管していた問題でも起訴した。 トランプ氏が昨年11月の大統領選で当選したことを受け、現職大統領を起訴しないという司法省の指針を理由に起訴は取り下げられている。それでも、スミス氏は最終報告書を司法長官に提出した。 機密文書問題で共謀したとして起訴された、トランプ氏の側近ウォルト・ナウタ被告と、同氏の私邸マール・ア・ラーゴのスタッフ、カルロス・デ・オリヴェイラ被告も、司法省による最終報告書の公表差し止めを求めていた。 フロリダ州連邦地裁のアイリーン・キャノン判事は7日、報告書の公表を一時差し止める判断を下した。両被告は、高等裁判所に対しても同様の申し立てをしている。 司法省は8日、第11巡回区控訴裁判所に対し、両被告の訴えを却下するよう求めた。 両被告の訴えによると、メリック・ガーランド司法長官が、連邦選挙妨害事件を扱った報告書の最初の部分を公開する予定だという。 ただ、両被告が申し立てしている間は、機密文書に関連する報告書の後半部分の公開を司法長官は保留するつもりだという。 (英語記事 Trump asks US Supreme Court to halt criminal sentencing)
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