「中晩かんブランド」続々 良食味、むきやすい…高級果実へ個性競う
「にじゅうまる」「紅プリンセス」
かんきつの主力産地が相次いで、中晩かんの独自新品種を打ち出している。甘さやみずみずしさといった食味の良さだけでなく、手でむけるといった簡便性も兼ね備えた品種も続々登場。消費者ニーズを捉え、高級果実としてブランド化しようと個性を競う。 近年販売を伸ばすのは佐賀県の「にじゅうまる」(品種名=佐賀果試35号)だ。2021年3月の市場デビュー以降出荷量は増え、23年度産は前年実績比で2倍を見込む。味が良く、皮を手でむけて、じょうのうごと食べられる。現在の出回り時期は3月だが、生産量が増えれば4月いっぱいまで販売できる見込みだ。 かんきつ類の生産量日本一の愛媛県は「紅プリンセス」(品種名=愛媛果試第48号)を25年3月から本格販売する予定。県育成のブランド「紅まどんな」と「甘平」を親に持ち、「紅まどんな」のゼリーのような食感と「甘平」の濃厚な甘味を併せ持つ“良いとこどり”のかんきつだ。出回り時期は親品種より遅い3月~4月頭ごろを見込む。県ブランドかんきつのリレー出荷の期間を伸ばし、ブランド向上を目指す。
「はるき」「ゆうばれ」
和歌山県は、初のオリジナル中晩かん「はるき」を育成。さくさくとした食感が斬新で、皮を手でむきやすく外観も良い。出回り時期は3月いっぱいで、26年3月に本格出荷を予定する。 熊本県は、23年に市場デビューした「ゆうばれ」(品種名=熊本EC12)を25年から本格販売する。JA熊本果実連が中晩かんでは「デコポン」以来、32年ぶりに商標登録をした。糖度が高くジューシーな食感が特長だ。 農研機構果樹茶業研究部門の野中圭介カンキツ品種育成・生産グループ長によると、中晩かんは、伊予カンなど古い品種の相場低迷を背景に育種が急がれてきた。2000年代以降に「紅まどんな」など高価格帯を狙える各県育成の中晩かんが相次いで登場した。県内限定生産を前提にしており、増産に時間がかかるため「今後は栽培のしやすさや収量の高さも兼ね備えた品種が求められる」と指摘する。(永井陵)
日本農業新聞