戦地ガザの子ども「ほぼ全員に精神的ケアが必要」 家族も笑顔も失った…ユニセフ報道官が見た過酷な現実
もう一つ、ユニセフが実施している活動で重要なのは家族再統合の支援です。今回の戦闘で約1万7千人の子どもが保護者を失ったと推定されています。ユニセフは、そうした子どもたちが祖父母やいとこ、おじやおばら親族と一緒に暮らせるように支援しています。ただ、親族も現在、自分たちの生活で手いっぱいで、新たに子どもを養うのは厳しい状況にあるのもまた事実です。 ラファで移動するとき、目につくのは空き地や路地に広がる簡易テントです。親族や友人宅のほか、学校に避難する市民も多数いますが、居場所を見つけられない市民は自らテントを設置して避難生活を送っています。食料や安全な水が極度に不足し、例えばトイレは500~700人に1基しかありません。水不足は深刻で、下痢の症状を訴えるなど感染症が拡大しています。しかも通常ならば医療機関で治療してもらいますが、ガザでは医療機関も部分的にしか機能しておらず、こうした医療機関での優先患者は攻撃でけがをするなど緊急度の高い負傷者で、下痢患者などは診てもらえません。
ユニセフは防寒対策として靴やジャケット、セーター、毛布などを配布するほか、せっけんをはじめ衛生用品も配っています。これ以上の病気のまん延を阻止しなければなりません。ガザでは、新たに生まれる命も多く、粉ミルクや妊婦用のサプリメントなども必要です。乳児用の予防接種ワクチンも搬入しましたが、数が足りません。とにかく、一刻も早く停戦し悪化する人道状況を改善しなければならないのです。 × × × ジョナタン・クリックス(JONATHAN・CRICKX) 1976年、ベルギー東部リエージュ生まれ。ベルギーのフランス語公共放送RTBFで勤務後、ユニセフエジプト事務所を経て2023年2月から現職。