戦地ガザの子ども「ほぼ全員に精神的ケアが必要」 家族も笑顔も失った…ユニセフ報道官が見た過酷な現実
イスラエル軍が地上侵攻するパレスチナ自治区ガザでは、人口約210万人のうち約3万人が死亡し、死者の約70%が女性や子どもとみられている。約170万人が自宅を追われ、南部ラファなどで避難生活を送る。水や食料の不足のほか、衛生状態が極度に悪化し、感染症の報告も増えている。こうした物理的な人道状況の悪化に加え、深刻化するのが子どもたちのメンタルヘルス(心の健康)の問題だ。1月下旬にラファを訪れた国連児童基金(ユニセフ)パレスチナ事務所(東エルサレム)のジョナタン・クリックス報道官が、ガザの子どもたちの状況を語った。(共同通信エルサレム支局 平野雄吾) 歴史が生んだ「世紀の難問」…イスラエル、パレスチナの争いはなぜ始まった 共同通信記者が基礎から解説
▽「極度の不安」が心身圧迫 1月24~29日、ガザ南部ラファを訪れました。ユニセフの主な活動の一つは精神的ケアのサポートです。私たちは昨年10月7日の戦闘開始以前、ガザでは約50万人の子どもが精神的ケアを必要としていると推定していました。ガザでは、これまでも度重なる戦闘があったためです。しかし、今回の戦闘開始後、その数は急増し、現在では約100万人いる子どもたちのほぼ全員が精神的ケアを必要とする状況にあると認識しています。 例えば、私がラファで会った子どもたちの中には、夜眠れない、食欲がない、おねしょをしてしまうなどの症状を訴える少年少女が多くいました。彼らの多くは何人も友人を失い、あるいは父親や母親、もしくは両親を亡くしています。極度の不安が彼らを襲っており、不眠や食欲不振、おねしょはそうした不安の兆候です。私がラファにいたときにも付近に空爆があり、建物が振動で揺れると、子どもたちは跳びはねるのです。子どもの精神状況を考えると、とても深刻な事態になっています。
ユニセフはこうした子どもたちの精神的ケアを支援するため、レクリエーション活動をしています。地元の提携団体と協力し、現在は避難所となっている学校でお絵かきや合唱、ダンスをします。現在の厳しい状況から少しでも離れさせる、いわば「子どもに戻る時間」をつくる活動とも言えます。レクリエーション活動はのべ4万人にしか提供できていませんが、わずかな時間でも子どもたちが笑顔を取り戻すことはとても重要です。こうした活動を通じて、精神状態がより深刻な子どもたちを見つけ、さらに個別のケアにつなげることもできます。 レクリエーション活動に参加した子どもの中には、11歳の少女がいました。家が空爆され、父親と母親、きょうだい3人が死亡し、彼女だけが生き延びましたが、彼女自身も負傷して左脚を切断、現在は松葉づえでの生活を余儀なくされています。ガザにはこうした子どもたちが多いのです。 ▽深刻な水不足、感染症拡大も