ネコや鳥なども被害、ゆっくりと死に至る残酷なネズミ粘着シートを禁止の動き、米国
粘着シートの削減に向けて
動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)をはじめとする動物愛護団体は、米国の都市や企業に対して、粘着シートの使用と販売をやめるよう長年にわたって働きかけてきた。こうした運動の結果、2023年にはカリフォルニア州ウェストハリウッド、2024年には同州オハイで、粘着シートの使用禁止条例が制定された。 アリゾナ州フェニックスにある3カ所を含む複数の空港でも、すでに粘着シートが禁止されていると、米紙フェニックス・ニューズ・タイムズは報じている。 また、米国には、ウェブサイトでも実店舗でも粘着シートを販売していない大手企業が数社ある。 米ジョージ・ワシントン大学が推進する、動物法の発展を目的としたプログラム「動物法教育イニシアティブ」の教員共同ディレクターであるジョアン・シャフナー氏は、現在審議中の下院法案を支持している。 「こうした非人道的に殺す方法を許すのは完全に非倫理的だと、私は考えています」とシャフナー氏は言う。「また、ほかに方法があるにもかかわらず致死的な手段を用いることも、非倫理的であると言えるでしょう」 たとえば、シャフナー氏は代替策として、ニューヨーク市が現在、試験導入しているネズミの出生抑制プログラムを挙げている。これは、人道的な配慮がなされたネズミ専用の特殊なトラップ(罠)の中に避妊用ペレットを置き、個体数の増加を抑えるというものだ。 「資源の使い道を、殺すためではなく、さまざまな動物の数を管理することを目的とした人道的なものに変えていく必要があります」とシャフナー氏は言う。
困難な救助作業
粘着シートから逃げようとするとき、動物は骨を折ったり、皮膚が裂けたりしてしまう。鼻や口が粘着面に張りつけば、窒息する可能性もある。 ハーマンス氏によると、ワイルドケアには、粘着シートにかかってから数日たった動物が運び込まれてくることが少なくないという。助かる見込みがあると判断された動物は、通常、鎮静剤を与えたうえで、大豆メチル溶剤や鉱油などを使って接着剤を取り除く。羽毛を失った鳥は体温調節ができないため、ふ卵器に入れる場合もある。 ハーマンス氏は以前、粘着シートにかかってワイルドケアに運ばれてきたガラガラヘビを見たことがあるという。 「粘着シートに張りついていなかったのは、ガラガラの部分(尾の先端)だけでした」と氏は言う。「ヘビをシートから剥がすのに1時間近くかかりました。ウロコを一枚一枚、ほんの少しずつ持ち上げ、その下に紙を差し込んで、再び接着剤につかないようにしながら進めなければなりませんでした」 水分補給を行い、栄養を少しずつ与えて代謝を再開させたのち、ガラガラヘビは自然に放たれた。 多くの野生動物救助施設ではまた、粘着シートにかかったネズミの治療も行っている。米バージニア野生動物センターの対外担当ディレクターであるコナー・ギレスピー氏によると、同センターでは2024年、ほかの動物たちに加えて、ハツカネズミ1匹、シロアシマウス2匹を治療したという。 「粘着シートの残酷さを目の当たりにして、自分が捕まえたネズミを助けてほしいと持ち込んで来る人も少なくありません」と氏は言う。 「どんなに小さな動物であろうと、思いやりをもって接するに値すると、われわれは考えています。ネズミはここで治療する動物の大多数を占めるわけではありませんが、われわれはほかの動物たちと同じように、一匹一匹に敬意をもって対応しています」