13勝でも昇給100万円「おかしかった」 怒りの契約更改…絶望した“チーム内格差”
工藤一彦氏は1982年に11勝、1983年は自己最多の13勝…エース格として活躍
元阪神投手の工藤一彦氏はプロ8年目の1982年に204回1/3を投げて、初の2桁勝利となる11勝8敗2セーブ、防御率3.00の成績を残した。9年目の1983年には13勝10敗1セーブ、防御率4.16。この年は巨人のエース・江川卓投手と先発で2試合投げ合っていずれも勝つなど、エース格としても結果を出した。にもかかわらず、工藤氏はこの頃を振り返りながら何とも切なそうな表情を見せた。これには“懐事情”が関係していた。 【画像】体のラインがくっきり浮かび上がる台湾チアの大胆ショット 阪神監督に安藤統男氏が就任した1982年、工藤氏は4月5日の開幕3戦目(中日戦、ナゴヤ球場)に先発するなど、先発ローテーション投手として活躍した。シーズン前半に7勝をマークし、監督推薦でオールスターゲームにも初出場。7月27日の大阪球場での第3戦で先発し、3回1失点に切り抜けた。「点を取られなかったら何か賞をもらえたかもしれなかったけどね」。これも思い出の一コマだ。 9月1日の大洋戦(横浜)に先発し、8回1/3を1失点でシーズン10勝目。初めて2桁勝利に到達した。チームでは山本和行投手の15勝に次いで、小林繁投手と並ぶ2位タイの11勝をマーク。この2人を上回る204回1/3を投げて、チームに貢献した。4月16日の巨人戦(後楽園)では、尊敬する小林を8回途中からリリーフしてプロ初セーブも記録。「(勝利投手の)コバさんに『助かったわ』って言われたのも覚えている」。充実の年だった。 翌1983年も工藤氏は好調をキープ。開幕3戦目(4月13日、広島戦=広島)に先発して5安打完封勝利でスタートし、小林と並ぶチームトップタイ、自己最多の13勝をマークした。このシーズンで特筆すべきは、江川と2度投げ合って2度とも勝ったことだ。土浦日大時代に「霞ヶ浦の江川卓」との異名もあった工藤氏にとって、1歳年上の江川は憧れの人。プロではよく先発で投げ合ったが、1982年までは1度も勝てなかった。