肉は高くて食べられないの…子ども食堂の窮状知った畜産農家が地元産牛肉を無償提供 あれにも肉、これにも肉の多彩なメニューに子どもたちの笑顔満開
「肉が高くて買えず、野菜カレーになっています」-。子ども食堂の窮状を聞き、鹿児島県西之表市の畜産関係者が動いた。同市生まれの牛の肉を無償提供。美浜町自治公民館で8月下旬にあった子ども食堂では、地元産牛肉をふんだんに使った料理が並び、参加者に笑顔が広がった。 【写真】地元産牛肉のサイコロステーキ=西之表市西之表の美浜町自治公民館
市内の和牛販売業者などが、種子島産牛肉をPRする狙いもあって10キロを提供した。同市では繁殖農家が約180戸に対し、肥育農家は1戸だけ。子牛のほとんどは島外に出荷され、各地域のブランド牛になってしまうのが現状だ。 市も地元産牛肉の価値を高めようと、2023年からふるさと納税の返礼品に取り入れている。和牛生産者代表として子ども食堂を訪れた宮脇幸喜さん(62)は「安納いもやサトウキビを餌に使っており、肉質は栄養豊富。脂がのっていながら食べ飽きないのが特長だ」と話す。 子ども食堂では、サイコロステーキや肉うどんにして振る舞われた。榕城小学校5年の下村美織さんは「軟らかくておいしい。料理にたくさん肉が使われていて大満足」とにっこり。食堂を運営する西統一さん(61)は「牛肉を手に入れる機会は少なく、地元の安心安全な食材なのでありがたい。たくさん食べて、元気に健康に育ってくれれば」と話した。
美浜町自治公民館の子ども食堂は毎月第4土曜日。19歳以下は無料、20~69歳は500円、70歳以上も300円で利用できる。 ◇畜産農家も深刻な危機 種子島の畜産が深刻な危機に陥っている。島内の競りで取引された和牛子牛の平均価格は、8月に37万円まで落ち込んだ。宮崎県で口蹄疫(こうていえき)が発生し、その影響を受けた2010~12年度に並ぶ低水準。飼料高騰のため採算ラインは55万円とされ、農家は頭を悩ませている。 関係者は「国が和牛の増産に取り組む中で期待通りに消費が伸びず、需給バランスが大きく崩れた」と指摘。新型コロナウイルスによる外出自粛や、ロシアのウクライナ侵攻による物価高騰を要因に挙げた。 西之表市和牛振興会の杉直樹会長は(38)は「地元産牛肉を味わってもらうのは、消費拡大に向けたいい機会。生産者のやる気や後継者の掘り起こしにもつながる」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島