「防衛力強化」の是非が沖縄の争点に浮上へ~「戦場化」への懸念を背景に
■離島自治体と県に温度差
一方、与那国町や石垣市など離島の自治体からは、ミサイルなどの攻撃から身を隠すシェルターの設置や、住民避難計画の詳細の確定を求める声のほか、有事の際の自衛隊や海上保安庁による使用に向け、空港や港湾の整備を国の支援で進める「特定重要拠点」への指定に期待する声も上がる。 こうした主に離島の自治体からの突き上げに対し、沖縄県は難しい立場に置かれている。 住民の安心や安全の確保は一義的な優先課題だとしても、「有事」に向けた備えの加速化が、かえって「有事」を呼び込むことにつながらないか、「国防」を名目としたインフラ整備が、健全な沖縄振興のあり方を変質させないか、といった行政としての懸念に加え、玉城県政の支持基盤が、防衛力強化だけでなく「有事」への備え全般に消極的な指向を持つことも、県の判断に影響しそうだ。
■知事の求心力回復へ争点化も
米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を巡る「代執行」訴訟で2023年12月に国が勝訴し、沖縄県が工事を止める手立てが乏しくなったことで、「辺野古移設反対」を最大の公約として掲げてきた玉城県政の求心力の低下が予想される。すでに対抗勢力からは、辞職や出直しの知事選を求める声も上がり始めた。 さらに2024年6月には現在与野党がきっ抗する県議会選挙が控えていて、玉城県政の「中間審判」的な意味合いも持つ。 そうした中、自衛隊と「有事」への備えを巡る諸問題で、政府と一線を画し、県民の平和志向に寄り添う方向へより踏み込むことで、玉城知事は県政継続の正当性をアピールすることができる。 2024年1月の台湾総統選挙を経た後の中台関係や、政府による「防衛力強化」の進め方次第では、「沖縄を再び戦場にさせない」というスローガンは今後、さらに県民的な広がりを見せるかもしれない。 玉城県政が、変化する状況の中でどのような路線を選択するのか、注目される。