2人目の9秒台が出ない男子100mの現状をどう考えるべきか?
9秒98の日本記録保持者・桐生は、今季100m初戦を5月12日のダイヤモンドリーグ上海大会で迎えた。9か月ぶりの100mということで、「自分の走り方がいまいち分からない部分がありました」というレースになり、10秒26(-0.5)の最下位だった。上海から帰国して、4日間は修正ポイントを決めて、その部分を繰り返し練習してきたという。 「上海は40mくらいまで良かったので、今回は60mまでうまく走ることができればいいと思っていました。加速局面の部分でじっくり上げることを意識して取り組んできて、この1週間でスピードに乗る感じが分かってきたのが収穫です」と桐生。テーマにしてきた中盤までの動きは悪くなかった。100mの技術を確かめながらレースに出場している段階で、タイムはさほど気にしていなかったという。その中での10秒17(-0.7)というタイムは、「まだまだいける」という手応えだ。 「山縣さんと競り合う展開になりましたが、硬くなることはなかったですし、もっとキレが出てくれば、同じ内容でもタイムは上がってきます。体重も1キロほど絞り切れていないですし。日本選手権に向けて、さらに加速部分を良くして、後半のイメージも固めていこうと思っています」 この数年は3~4月に10秒0台を出してきた桐生だが、その反動もあり、夏場に落ち込む傾向があった。今年は夏に向けて合わせていくことを考えており、まだまだ上昇の余地がある。 10秒19(-0.7)で日本人3番につけたケンブリッジも、「順位は残念でしたけど、レースを重ねるごとに良くなってきている。日本選手権に向けていいレースになったと思います」と笑顔を見せた。課題のスタートはまだ「30%」ほどだが、今回も持ち味の終盤で山縣らに迫っている。 注目されたカルテットの中でひとり心配な選手がいる。 昨季、自己ベストを0.18秒も短縮するなど、シンデレラボーイとなった多田修平だ。昨年の日本選手権はケンブリッジ、桐生、山縣に先着して2位に食い込んだが、今回は10秒32(-0.7)の6位。タイム的にも3人に水をあけられた。「スタートからダメで、中盤の加速も昨年とは違う方向に出てしまった」と多田。今季は試行錯誤を繰り返しており、まだ自分のレーススタイルが決まらないようだ。