ルペン氏、フランス内閣の命運握る-追加の譲歩なければ不信任可決も
(ブルームバーグ): フランス政府の財政再建の取り組みは、新たな政治・金融危機を招く危険があり、同国資産の売り要因だ。
債務拡大に歯止めをかけたいバルニエ首相の努力は、2025年度政府予算案阻止に向け、一致して不信任案を可決すると脅しをちらつかせる野党勢力の妨害で頓挫しつつある。
バルニエ首相は28日、重要な争点となっていた電力消費税の引き上げ見送りを明らかにし、野党側の要求に譲歩した。
それでもマリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)のバルデラ党首は、薬剤費償還の引き下げ中止や来年1月からの年金の物価スライド制導入、より厳しい移民・犯罪抑制策など追加の譲歩を求めている。
国民議会(下院、定数577)で最大勢力となった左派連合は、不信任案を来週にも提出する構えだが、可決には他の野党の協力が不可欠であり、ルペン氏とRNが重要なキャスティングボートを握る。バルニエ内閣は、数週間以内に命運が尽きるリスクに直面する。
ルペン氏は政府予算案について、「まだ障害がある。きょう(28日)は木曜だ。彼には月曜(12月2日)まで時間がある」と仏紙ルモンドにコメントした。
国民議会は7月の決選投票の結果、絶対多数政党不在のハングパーラメントとなり、法案、特に政府予算案の可決は難しい。ただ少数与党政府には、議会の採決を経ずに法案を成立させる憲法49条3項の特例条項を用いる選択肢がある。
しかしその手段に訴えれば、不信任投票につながる恐れがあり、議会の過半数が支持すれば、政府予算案は事実上葬られる。新人民戦線は、憲法49条3項を政府が用いれば、不信任案を提出する方針だ。
ルペン氏はルモンド紙の取材に対し、政府が憲法49条3項を適用し、社会保障財源法案を成立させる場合には、来週にも不信任決議に賛成する意向に変わりはないと語った。
バルニエ内閣が万一崩壊すれば、政府機関の閉鎖回避に向け徴税を可能にする「特別法」の緊急措置や最低限の支出を認める法令での対応があり得ると議員や法律専門家らは指摘する。そのような事態になれば、有害な緊縮財政や財政再建努力を損なう危険が生じると閣僚らは警告している。