熊本地震被災地で好評 愛知・豊川の企業が開発した快適・新型仮設トイレ
「男女兼用で使いにくい」、「清潔さに欠ける」と、人気が高くない仮設トイレ。そのイメージを一掃した新しい水洗式仮設トイレを愛知県豊川市の機器開発会社が開発した。量産が始まったばかりのこの新型トイレを、熊本地震益城町災害ボランティアセンターに無償で設置したところ、女性の利用者を中心に、好評の声が届いたという。同社担当者は「厳しい状況でも、衛生的なトイレで、快適に過ごして欲しい」と思いやる。
温水洗浄便座・手洗い場完備 通信機器の充電にも対応
新型トイレを被災地に無償配置したのは、豊川市の機器開発会社サラオだ。 仮設トイレは高さ2メートル、幅1・5メートル、奥行2メートル、重さ1トン。内部の壁や棚には木材を使い、温水洗浄便座と男性用小便器、鏡、手洗い場を設けた。 外壁には照明のほか、携帯電話やスマートフォンの充電に対応する電源供給コンセントを設けた。屋根には最大出力920ワットのソーラーパネルを設置。電気は蓄電池にためることもでき、自力で必要な電力を賄う。水はタンクからの供給や、近くに川がある場合は、ポンプでくみ上げる。汚水はタンクや浄化槽、下水道に接続して処理する。 4トントラックで運搬可能で、設置は1日で済む。販売やリースでの需要を見込んでおり、価格や費用は調整中だ。
現場で活躍する女性増加 快適な仮設トイレ求める声を形に
開発のきっかけは、高速道路のガードレール設置や、太陽光発電事業を手がけていた同社の親会社からの意見だった。 近年の建築現場は、女性作業員が増えたことから、従来型の男女兼用仮設トイレではなく、快適な仮設トイレを求める声が上がっていた。 そこで、水洗式であることや洋式、小便器、親会社の強みである太陽光発電の利用など、快適な条件を1つにした仮設トイレの開発に着手。担当の山口清之さん(31)は「仮設はもちろん、常設型トイレとしても使えるような仕上がり」と自信をのぞかせる。
量産の矢先に熊本地震 飛び込みで設置申し出る
新型仮設トイレが量産体制に入る頃、熊本地震が発生した。福岡県出身の山口さんは「(熊本に)友人がいるので心配に思っていた」ことや、親会社からの助言もあり、被災地で使ってもらうことにした。 交渉のため4月下旬に熊本入り。「避難している人に使ってもらおう」と、飛び込みで避難所へ向かい、現地の担当者と交渉しようと試みた。しかし、頻発する余震の中、避難所は運営が大変で、担当者と話ができる状況ではなかった。各地を回る中、益城町の災害ボランティアセンターと話がまとまり、設置することにした。
「清潔」女性から好評 課題の汚水処理「管理ストレス和らぐように」追求
設置後、利用者の様子を見ていると、女性が好んで使う様子が見られた。一般的な仮設トイレより空間が広く、鏡もあるため着替え場所としても重宝された。同センターのフェイスブックでも取り上げられ「清潔」とのコメントが寄せられている。 今後の課題について山口さんは「汚水処理」と見る。「設置した場所で汚水がうまく自然環境にかえる仕組みができたら、仮設トイレの管理も楽になって、携わる人たちのストレスも和らぐ」と、さらに快適な仮設トイレを追求する構えを見せた。 (斉藤理/MOTIVA)