【惜別・叶井俊太郎】世界46か国以上で上映禁止! 映画史上最悪の鬼畜ホラー映画
映画を観ると感情移入してしまう
――いやいや、観てない映画を買い付けてくるってどういうことですか? 映画を観て買い付けると思い入れが入ってしまうからね。その映画に感情移入してしまうと、「ビジネス」としてはよくないと思うんですよ。映画監督にもいるじゃない。感情移入しすぎて、意固地になってしまってる監督とか……。 ――志高く映画を撮っている監督はたくさんいます。謝ってください。 ごめんなさい(笑)。映画を作る人たちのことは尊敬しています。でも、映画の制作と買い付けや配給は全然別だから。「いい映画だったから買う」とか「これをみんなにも観てほしい」とか感情移入してやってると失敗することが多かったから。 ――志高く映画を買い付けている人はたくさんいます。キノ・イグルー※に謝ってください。 ごめんなさい(笑)。でも、映画を1本買い付けてくるって本当に大変なんですよ。 ※キノ・イグルー:世界中から良作映画を買い付けて上映している有坂塁と渡辺順也による移動映画館。 ――いつも映画は観ないで買い付けてくるんですか? 一応、オレもこう見えてホラー映画のヒット作をたくさん仕掛けてきたことで知られているわけですよ。『八仙飯店之人肉饅頭』『キラーコンドーム』『ムカデ人間』……。でもね、全部観てないのよ、正直。観てしまうと、商売として難しくなっちゃうから。
自分は観ないけど、みんなには観てほしい
――叶井さんといえば、社会現象になった『アメリ』のバイヤーとしても知られていますが……。 もちろん観てません。 ――やっぱりですか……大ヒットした映画ですけど……。 はい。ホラー映画かなと思ってポスターと予告編だけ観て買いました。でも、『アメリ』の話でいうと、10月公開予定の『オカムロさん』という映画に出演する子役で本名が「アメリ」って名前の女の子がいたんですよ。そのお母さんに名前の由来を聞くと、映画『アメリ』から名付けましたって言われて、さすがに嬉しかったですね。 ――それはいい話ですね。 でしょ! 『アメリ』も引き当てたオレが自信を持って買い付けた映画なんだから、『セルビアンフィルム』も見ごたえあるはずです。だから、あなたも『セルビアンフィルム』を劇場で観てくださいね。 ――え! 買い付けた叶井さんも観てない映画をですか!? いや、その週は『キャメラを止めるな!』を観に行きたいなと…。 それはオレも気になってるから観に行きたいと思ってるけど、それ観た後で観に行ってよ。 ――あ~、『キングダム2 遥かなる大地へ』も観たいんで……。 じゃあ、もう観に行かなくていいけど、せめてこの記事の最後に映画の情報入れてしっかり宣伝しといてくれよ。こういうインタビューって大体宣伝のためにやるもんでしょーが! ――(いや~宣伝宣伝うるさいな……)もちろん、バッチリ宣伝しておきます! 本日はありがとうございましたっ! 取材・文/隅田川レコバ 本記事は2月16日に逝去した叶井俊太郎氏(享年56)の仕事を偲んで再編集・再掲載する。 (初公開日:2022年7月15日。記事は公開日の状況。ご注意ください)