農家人生を懸けてつかんだ「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」京都府京丹後産のブランド化目指す
晩秋の訪れとともに、香ばしく甘い風味を漂わせる焼き芋。京丹後産サツマイモのブランド化を目指す京都府京丹後市峰山町の竹田克寛さん(39)は、人気品種の「紅はるか」で今年2月、サツマイモの日本一を競う「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」の1人に選ばれた。鹿児島県など特産地の生産者を抑えて勝ち取った栄冠に「京丹後で一生懸命にイモと向き合ったことが評価され、うれしい」と控えめに喜びを語る。 京丹後市峰山町五箇の国営開発農地にある約3ヘクタールの畑。そこは最初から作物の栽培に恵まれた土地ではなかった。入植した2019年春、ニンジンやキャベツを育てようとしたが、耕作地で十分な水量を確保できず、思うような収穫を上げられなかった。2年目から作物の主力を比較的少ない水量で育つサツマイモに切り替えた。「農家人生を懸ける」という思いで臨んだ「窮余の策」だったという。 農薬や肥料は極力使わず、畝(うね)を高くして水はけを良くし、夏季はこまめな水やりで地温を下げ、本来の生命力を引き出せるよう工夫を重ねた。「サツマイモのことを考えて基本に忠実にやっているだけです」。謙虚さと地道な努力が実を結んだ。受賞で注文が殺到し、今秋の収穫分のほとんどが売約済みという。 大阪府柏原市の住宅街で育ち、子どものころは農業と無縁だった。高校時代に見たテレビ番組が農家に憧れるきっかけとなった。微生物を研究した大学・大学院時代、関東や北陸の農家で住み込み体験を重ねた。卒業後、茨城県で農業関係の会社で働くなど農業人生を歩み始めた。独立を考えた時「近畿の中でも自然豊かな京丹後」を生産地に選んだ。 「京丹後が日本一おいしいサツマイモの産地として知られることが夢」と目を輝かせる。