音と緑と街との関係 from ototabito #1-1【長野県茅野市|TINY GARDEN 蓼科】
音と緑と街との関係 from ototabito #1-1【長野県茅野市|TINY GARDEN 蓼科】
ランドネ本誌で連載を続けるミュージシャンのKeishi Tanakaさん。2024年6月から、連載のシーズン3として「音と緑と街との関係」をスタート。本誌ではKeishiさん本人とその街との関係について読むことができます。そして、こちらのWEB版ではさらにおすすめのスポットを3回に分けて紹介してもらいます。 Keishi Tanakaさんの連載が掲載されている最新号は、こちら! >>>『ランドネNo。136 8月号』。
まさに音と緑と街をつなぐ場所
2024年6月15日、16日に開催された「TINY GARDEN FESTIVAL 2024」に出演した。3年連続となる。当初は2日目のみの出演オファだったのだが、急遽1日目の最後にも歌うことになった。しかも、ステージではなく焚き火の前で。 「TINY GARDEN 蓼科」と僕との関係は、2021年の1月から始まった。まだコロナ禍まっ只中で、ライブのスケジュールが入っては消えるということをくり返していた時期である。ほぼ家に閉じ込められていた反動で、どこか知らない街に滞在をして制作をしたい衝動にかられていた。 そんなときに教えてもらったのが「TINY GARDEN 蓼科」だった。アーバンリサーチが運営するキャンプ場。3つに分かれているテントサイトはもちろん、ロッジやキャビンなど宿泊プランも選べて、さらに食事にもこだわっていることが伺えた。 そして、僕がとくに気になったのは、ワーケーションを推奨している点だった。都会を離れてバケーションを取りながら、最低限の仕事は続ける。ワークステーションという建物があり、Wi-Fiなども完備されているので、オンラインミーティングにも対応できる。パソコン1台あればここでも仕事ができることをうたっていたが、実際に足を運んで、それが大袈裟ではないことがわかる。昼間に仕事をして、夜は焚き火と温泉。サウナだって楽しめる。 もちろん、僕の場合は音を出したりもしたかったので、事前に連絡をして事情を説明し、ハイシーズンではない冬の時期ならばということで、1月を待ってその日を迎えたのだった。 僕がキャンプや山登りを趣味としていることも理解してくれたうえで、特別に許可をもらい、1週間の滞在制作が始まった。このときはあまりTINY GARDENのスタッフとも交流をせず、ひとりで焚き火をしながら自炊をして、温泉だけを借りて過ごした。散歩などは積極的にしていたが、とにかく遊びよりも制作したい欲が勝っていた。そういう意味で、思い返してもとてもストイックな日々だった。 自分の部屋ではなく、場所を変えてワークステーションで歌詞を書いたりもした。5thアルバム「Chase After」に収録されている「Slow Dance」の歌詞は、最初から最後までをこの場所で、この景色を見ながら書きあげた。 最終日には、噂を聞きつけたランドネスタッフが、取材をするためにわざわざ足を運んでくれた。写真はすべてその時のものである。最後は少しリラックスした雰囲気で終えられている。その表情からも充実感が伺える。最後の夜はみんなと過ごそうと決めていたので、オンラインでの打ち合わせから相談に乗ってもらっていたTINY GARDENの粟野龍亮さんともちゃんと話すことができた。 ずっとひとりで過ごしていたので、あまり人付き合いをしない人だと思っていたようだ。申し訳ない。もしそうであれば、突然メールをして、交渉をして、こんな行動に出たりはしないだろう。この最終日を楽しみに頑張っていたことを伝えると、粟野さんはホッとしたような笑顔を浮かべた。 東京に帰る日。初めてTINY GARDENの朝食を食べた。1週間ほど簡単なものしか食べていなかったこともあるが、おいしいもので元気が出ることを再確認した。ランチの時間には地元の人が気軽に訪れていたのも頷ける。 「都会から来た人には自然を感じてもらい、茅野に住む人には少しの都会を感じてもらえたらうれしい」という、前日の粟野さんの言葉を思い出す。 最高に気持ちの良い朝だった。 TINY GARDEN 蓼科 。
ototabito(オトタビト)
音楽をきっかけとした、自然と街、そこで暮す人たちと出会うアウトドア旅を提案。アーティストが、自身の音楽とつながりのある街と思い出の場所を紹介します。 テキスト◎Keishi Tanaka/写真◎野呂美帆
ランドネ編集部