エンタメ業界は「多様性や包括性」を協調しすぎ?アメリカZ世代と「レプレゼンテーション」を考える
Cartoonがパーソナリティを務めるinterfmで放送中のラジオ番組「sensor」(毎週金曜19:00-21:55放送)。番組コーナー「NY Future Lab」では、これからの時代の主役となる「Z世代」と「ミレニアル世代」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どのような性質や特徴があるのかなどについて、Z世代・ミレニアル世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していきます。 12月15日(金)のテーマは、「アメリカZ世代が映画やドラマに求める『レプレゼンテーション』とは?」。「NY Future Lab」のメンバーが、映画やテレビなどエンタメ業界で重要な価値観であるレプレゼンテーションについて語り合いました。
◆レプレゼンテーションとは何か?
前回の放送では、Z世代がエンタメやファッションにノスタルジア(懐かしさ)を求めている話をお送りしました。今回は、彼らが求めている「レプレゼンテーション=representation」に注目します。 「表現する・描写する」を意味するレプレゼンテーションですが、近年は映画やドラマなどのシーンにおいて、「自分が感情移入できる役の人が登場しているかどうか」という使われ方をしています。 例えば日本人の場合、大河ドラマには自分たちの先祖がたくさん登場するため、感情移入できる人が多いから夢中になる人が多いのではないか、と考えることができます。 一方、ダイバーシティの国アメリカでは、「自分と同じ人種やジェンダーが映画やドラマに登場しているか?」というレプレゼンテーションの有無が、映画やテレビなどのエンタメ業界で重要視されています。 なぜ、レプレゼンテーションが大切なのか。ラボメンバーたちに聞いてみました。 メアリー:まず、白人男性ばかりが主人公だと、本当につまらないでしょう? ノエ:今のテレビや映画ってレプレゼンテーションはある程度あるけれど、まだ主に映っているのは白人って感じがするけどね。 メアリー:80年代や70年代を振り返ってみてよ。ほとんどの主役は白人男性だったんだよ。それが、だんだん変わってきて、何かを成し遂げようとしている女性が主役の作品ができるようになり、次は白人ではないピープル・オブ・カラーの人が主役になる、みたいな流れで進化してきた。 そして、視聴者にとっても重要なのは、その人物と自分を重ね合わせられること。例えば、強い女性キャラクターを通して「私もあんな風になれるかもしれない」と感じられたりする。 もし、私が70年代や80年代で専業主婦だったとして、その時代の女性がキャリアウーマンになる姿を描いた作品を見れば、「私もあんな風になれるかもしれない」と思えるでしょう。今の自分以上のものになるチャンスが見えてくるんだよね。 ディズニー映画の黒人のプリンセスも同じだよね。白人以外の小さな子がそれを見て、「私だってプリンセスになれる」って思えるから。 ノエ:まだあまり映画やドラマで描かれていない人種がアジア系なんだよね。僕が知っている限りでは、例えば白人の多いコミュニティで育ったアジア系の人たちが、アジア人であることに恥ずかしさを感じているということなんだ。彼らが見るものや聞く話が白人中心だから、より白人っぽくなりたくて、アジア人らしさを捨てようとするんだよね。 もっとも大切なのは、あらゆる人が存在を認められることだよ。映画やテレビで私たちみんなのアイデンティティが認められることが、何よりも大事なんだよね。 あらゆる人種、LGBTQ含むジェンダーのダイバーシティがどれだけ作品に反映されているかどうかが、現在のアメリカのエンタメ業界でいかに大切なのかが伝わってくる話し合いでした。逆に、そうでないと自分のアイデンティティが世の中で認められていないと感じ、自分に自信を持てなくなってしまうおそれがあります。