水使わずに繊維を脱色する新技術…福井大学産学官連携本部が開発 製品リサイクルにつながる可能性
福井県の福井大学産学官連携本部は10月23日、水を使わずに繊維を脱色する技術を開発し、ポリエステル製の布で100%に近い脱色に成功したと発表した。繊維産業では、生産過程での大量廃水や売れ残った製品の大量廃棄などが課題となっている。今回の技術が実用化できれば、製品を脱色、再染色してリサイクルする仕組みにつながる可能性があり、同本部は「繊維産業の構造変革の布石になる」と強調する。 福井市の福井大文京キャンパスで同日、研究の中心となっている廣垣和正教授と同本部長の米沢晋教授が説明した。同大が中核となって繊維産業の環境問題解決を目指す「フクのミライを創るプロジェクト」(フクミラ)の一環で、国立研究開発法人科学技術振興機構の支援で取り組んだ。 福井大などは従来、高温高圧状態で液体と気体の性質を併せ持つ「超臨界二酸化炭素」による染色技術の研究を進めてきた。その技術を応用し、染料ではなく脱色剤を超臨界二酸化炭素に溶かし、布を脱色したところ、元の生地とほぼ変わらない状態になったという。廣垣教授は「100%ではないが再染色に問題はなく、原料として再利用可能なレベル」と話す。 これまでも界面活性剤などを使って脱色する方法はあったが、廃液など環境負荷が大きいほか、繊維を傷めるなどの課題があり、今回の技術で克服できるとしている。 今後は実際の繊維製品の脱色加工に向け、工程などの研究を進める。廣垣教授は「リサイクル品を受け入れる社会づくりも必要。技術開発と両輪で進めたい」と強調。米沢教授は、染色と脱色双方の技術を用い「新しい産業や事業を生み出せるのではないか」と期待した。
福井新聞社