箱根駅伝Stories/新体制で挑む神奈川大の次期エース酒井健成「全員駅伝でシード権獲得を」
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。 箱根駅伝2025 神奈川大の選手名鑑をチェック!
自分が神奈川大を引っ張る
第100回箱根駅伝。神奈川大のアンカー10区を務めたのが酒井健成(3年)だ。復路のレース中に大後栄治・前駅伝監督の勇退が発表され、酒井は35年間指揮を執った大後氏の下で箱根路を走る最後のランナーとなった。 「酒井いけ!」 いつもはあまり叫ばないという大後監督が、後方の運営管理者から大声で叫んだ。「あんなに叫んでもらえてうれしかった」。ラスト1㎞はハムストリングスをつりながらも区間8位で走り切った。4年生が10人中7人を占めたチームは、12月に故障や体調不良が続出し、総合21位。「とても悔しい順位。来季は自分自身が主力として、全種目で自己ベストを出してチームのエースになる」。自分が神奈川大を引っ張る覚悟が芽生えた箱根路だった。 中野剛駅伝監督の「1月3日で終われるチームになろう」という一言から新チームが始動した。酒井は冬場に実業団合宿に参加するなど走り込んだが、目下の課題は10000mの上位8人のタイムを上げることだった。 小林篤貴(現・NTN)や宇津野篤(現・マツダ)ら10000m28分台を持っていた主力が大量に卒業。神奈川大は6月に控えていた全日本大学駅伝関東地区選考会の参加資格となる上位20校に入るかどうか微妙な情勢だった。 酒井の10000m自己記録はその時点で29分24秒14。5月の関東インカレ2部10000mタイムレース1組目に出場した酒井。「自分と宮本(陽叶、3年)が1秒でも自己ベストを出さないと」。ペースが遅いと判断すると、4000mから8000mまで国立競技場を実に10周、1人でレースを引っ張った。 結果は29分36秒60と自己ベストには届かなかったが、酒井の引っ張る姿勢はすでにチームに伝わっていた。神奈川大は17番目のタイムで選考会出場権を得た。劣勢が予想されていた選考会ではギリギリ7位で見事伊勢路行きも決めた。 愛知県豊田市生まれ。長兄が10歳上、次兄が7歳上におり、祖父が運営していた陸上クラブに兄たちを追いかけ幼稚園の頃から遊び感覚で走っていた。上郷中で陸上部に入ると、1500mの自己記録は県通信で出した4分17秒41だった。 愛知高に進むと、学年が上がるごとに5000mの記録は伸びた。インターハイ路線には絡めず、県高校駅伝は豊川高と名経大高蔵高の壁に阻まれ3年連続3位だったが、「チームの主将代理という肩の荷が下りて、調子も良かった」という12月の日体大記録会5000mで14分25秒13をマークした。 鈴木健吾(現・富士通)の2学年上だった長兄の一(はじめ)さんが神奈川大の副務を務めていたこともあり、兄を追いかけ神奈川大に進んだ。入学後は夏からAチーム入りし、順調に力をつける。3年生となり、7月の関東学連網走記録挑戦会10000mで28分50秒21をマーク。精力的に夏合宿もこなした。