福島県のいわき信組迂回融資 2008~2011年で総額10億円超か 元職員の横領も発覚
いわき信用組合(本部・福島県いわき市小名浜)は15日、旧経営陣が大口融資先の企業の資金繰りを支援する目的で、個人への貸し出しを装う迂回(うかい)融資をしていたと発表した。2008(平成20)年7月ごろから2011年2月ごろまで続き、融資は総額10億円を超えるとみられる。元職員を名乗る人物による交流サイト(SNS)での指摘を端緒に内部調査を進めた結果、元職員による2件の横領とともに発覚した。一連の不祥事を受け、弁護士や公認会計士ら外部の専門家による第三者委員会を設置し、原因究明や再発防止策の検討を進める。 本多洋八理事長が市内で記者会見して明らかにした。2008年7月当時、最大の融資先だった市内の企業の業績が悪化し、融資基準を満たさなくなり、貸し付けができなくなった。当時理事長だった江尻次郎前会長(今月1日付で会長を辞任)ら代表理事4人が協議し、融資先の役員や家族、信組の役員の家族・親族らへの融資を装い迂回融資を行っていた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で融資先が一時、営業休止するまで毎月のように続き、融資額は既に把握しているだけで10億円を超えるという。未回収額などは今後調査する。
いわき信組は当時、業績不振な別の大口融資先を抱えており、経営陣は「同じ時期に大口融資先が二つ破綻すれば同信組も破綻に追い込まれる」と考え、経営改善は可能とみて迂回融資を始めたという。旧経営陣の行為は背任などに当たる可能性もあり、第三者委の調査結果を踏まえて刑事告発などの対応を検討する。 発覚した2件の横領のうち、1件は2014年7月に当時支店係長だった元職員が端末を操作し、支店の帳簿から4500万円余りを着服したが、旧経営陣が隠蔽(いんぺい)したという。また、2009年6月ごろに支店次長だった元職員が支店金庫から20万円程度を着服して返却したが、支店長が本部に報告しなかった。 一連の不祥事が発覚したのは10月上旬。上部団体の全国信用協同組合連合会(全信組連)から、「X(旧ツイッター)に『元信用組合職員』を名乗る人物による、いわき信組の不正の隠蔽を指摘する投稿がある」との連絡があった。信組の内部調査で投稿の内容はおおむね事実であると判明した。