増え続ける不登校に学校は対応できるのか…全国に先駆け緩やかに寄り添う学びの場づくりで成果上げる私立高 なお足りぬ受け皿に、関係者は「公立」の参画を期待する
年30日以上欠席した不登校の小中学生が、2023年度に初めて30万人を超えたことが文部科学省の調査で分かった。鹿児島県内の公立小中高校でも最多の5432人に上る。居場所がない児童生徒の受け皿として「学びの多様化学校」(不登校特例校)の整備が全国で進むが、県内は私立の鹿児島城西高校(日置市)のみ。関係者から公立の設置を求める声が上がる。 「力加減はどう?」。女子生徒が友人に声をかけながら、手のひらや腕をもみほぐす。10月中旬、不登校経験者46人が通う鹿児島城西の多様化学校「ドリームコース」。リラクゼーションの授業では、2年生8人が外部講師からハンドケアの手法を学んでいた。 全国に35校ある多様化学校は、子どもに合わせた独自科目など、柔軟なカリキュラムを組めるのが特徴だ。城西ではマジックやメークなど、対人関係が苦手な生徒が会話に慣れるよう、コミュニケーションを重視した授業を開講する。2年生の女子生徒は「人と話すときに緊張しなくなった」と笑顔を見せる。
登校しやすいように専用玄関を設け、教室は教育相談室や保健室の近くに配置するなど配慮した。学習でも、1年生時に国・数・英を小中学校の基礎から指導し、登校できない生徒には自宅学習を支援している。 コースに通う1年生の女子生徒は中学時代、担任からの指導や声かけを「威圧的」に感じ、入学早々から不登校になった。休みが長引くほど足が向かなくなり、3年間の大半を欠席した。現在は毎日、元気に校門をくぐる。「習っていない内容を学び直せて、苦手意識がなくなった。悩みを理解し合える友達がいるから、今は学校が楽しい」 06年度に全国の高校で初の多様化学校として開設したドリームコースには、これまで300人以上が入学。多くが卒業後に進学、就職している。責任者の井上貴央教諭(52)は「生徒の自立を助け、将来につながる場として果たす役割は大きい」と胸を張る。 文科省は23年3月に不登校対策を取りまとめ、全都道府県に多様化学校計300校設置の目標を打ち出した。宮崎では24年4月に延岡市が開設。来春には宮崎市が夜間中学に多様化学校の機能を持たせる予定だ。
一方、鹿児島県内では私立の鹿児島城西のみで、動きは鈍い。県議会は3月、多様化学校の設置検討を含めた不登校対策を塩田康一知事へ提言した。フリースクールを運営し、子どもや保護者から不登校の相談を受けるNPO法人「麻姑(まこ)の手村」の卓間光哉理事長(67)は「費用などから公立を求める声は多い。緩やかに登校し、学べる環境の整備が、より必要になる」と語った。
南日本新聞 | 鹿児島