サンロイヤルホテルの県有地移転、県議会はどう判断? 債務超過20億円、識者は「三セクゆえの経営の甘さ」を指摘する
鹿児島港本港区エリアで県有地の住吉町15番街区(鹿児島市)への新築移転を希望する同市の鹿児島サンロイヤルホテルについて、12日開会する県議会で議論が始まる見通しだ。運営する第三セクターの鹿児島国際観光は3月末時点で20億円弱の債務超過状態だが、跡地売却を見据え新天地での運営に自信を見せる。識者らは「県有財産や税金が絡む以上、透明性の高い議論を」と注文する。 【写真】〈関連〉鹿児島サンロイヤルホテルの現在地と移転を希望する住吉町15番街区や天文館、白波スタジアムなどとの位置関係を地図で確認する
同社は市(6000万円)や県(1000万円)が出資し立ち上げた三セク。ホテルは国体開催に備え整備され、1973年全面開業した。建物は2017年、耐震化が必要と診断されたものの50億円前後の費用がかかるほか、負債総額も50億円近くあり、県有地などで長期定期借地できる移転先を探していた。 同社によると、債務超過に転落したのは1984年度。ピーク時の95年度は約28億5000万円を超えた。その後は2018年度まで黒字が続き13億2891万円まで圧縮できたが、新型コロナウイルス禍で以降は4年連続の赤字。22年には国などの補助金や助成金活用のため、資本金を2億円減らし5000万円にした。 24年3月期決算はコロナの5類移行のほか、鹿児島国体や総文祭開催が影響し黒字となった。下津昭則社長(60)は「債務超過はコロナがなければ、解消へ近づいていた」と説明する。決算では、土地代を取得時の額面のまま計算し続けているため、「債務超過はあくまで帳簿上だけ。土地を売却すれば含み益は20億円を軽く超え資産超過だ」との認識を示す。
同社総合企画部の林元良秋部長(59)は「出資金を除き税金は投入しておらず、今後も経営に関して投入する予定はない」と断言。あくまで一企業として運営を続ける自信を見せるが、建築費を含む移転費用については「取引金融機関と融資などについて協議する」と述べるにとどまる。 「一般企業なら通常、債務超過が続けば融資は止まる」と指摘するのは、地元金融機関出身で志學館大学元教授(地域経済論)の大重康雄さん(70)。債務超過を解消できれば融資は受けやすくなるとした上で「長期的な収益性も判断材料になる」と先行きを案じる。「県有地を使う以上、移転への県民の理解は必要。透明性の高い議論が求められる」と話した。 鹿児島大学の有馬晋作客員教授(68)=行政学=は「三セクは自治体が絡む安心感から、経営が甘くなりがちな場合が多い」とくぎを刺す。コロナ禍からの回復や訪日客増加に伴いホテル需要は今後も高まるとして、「そもそも三セクではなく民間でもいいのではないかという議論も予想される」と見通した。
ホテルはこれまでスポーツ合宿や修学旅行生なども多く受け入れてきた。下津社長は「これまでのノウハウを生かし、新しいホテルでも使命を果たして公益性・公共性を維持し、県民に愛される施設を目指したい」と話す。
南日本新聞 | 鹿児島