<緊急寄稿>空爆のような爆音だった ── 野口健が遭遇したネパール地震
ネパールで25日に起きたマグニチュード7.8の強い地震。アルピニストの野口健さんは、ネパールにあるヒマラヤ山系エベレストの近くを歩行中に地震に遭遇した。雪崩の様子を「空爆のような爆音」と表現し、シェルパの村は壊滅状態だった。いまも余震に見舞われており、「この瞬間にネパールにいたものの運命として、自分のできることを行っていきたい」と話す野口健さんに、現地から緊急寄稿してもらった。 -------------
4月25日、ネパール全土を地震が襲ったとき、私は、4500mの斜面を吹雪の中トラバースしていた。グラッとし、地震だと気が付いた後、「グオー、ゴー」とまるで空爆のような爆音が聞こえはじめ、雪崩が起きているのだと気が付いた。吹雪で全く視界が見えない中、何が起きているのか分からず、シェルパと一緒に岩陰に隠れ、落石から身を守った。 あまりの音に、不気味さを感じ、とにかく急いで、シェルパの村へ降りた。そして、家々が崩れているのを目の当たりにし、唖然とした。翌日、同行していたシェルパの家があるクムジュン村へと急いで向かった。 クムジュンも壊滅的であった。お隣のクンデ村やナムチェバザール村は更に深刻との事。僕の知っているシェルパ達の家もみなそれぞれ被害を受けている。頭を抱え込むシェルパ達。エベレストに何度も登りコツコツ貯めて築き上げて建てた家が一瞬にして。
余震も続き、翌日26日の13時には最大級の余震が。僕が休憩中のロッジは音をたてて壁が崩壊。慌てて表に飛び出した。それ以外にも多くの住宅がこの余震により崩れた。 この春のシーズンは例年よりはるかに雪が降り続けていた。上部では雪が積もりに積もり、3000m以下では連日の雨。そんな最悪なタイミングで巨大地震。上部では雪崩や氷河の崩壊による被害。それだけではない。標高が低ければ雨によって緩んだ斜面からの土砂崩れによる被害。この度の地震は実に様々な被害を引き起こした。 エベレストでは、地震直後に大きな雪崩がベースキャンプを襲い、多くの犠牲者が出ている。最も安全なはずのベースキャンプが雪崩と爆風によって、テントと人間を吹き飛ばしたのだ。