『原神』や『崩壊:スターレイル』がある中で、なぜ新規タイトルを立ち上げた?『ゼンレスゾーンゼロ』開発者に聞く、「ゼンゼロを作ろうと思った理由」
『ゼンレスゾーンゼロ』……『崩壊3rd』『原神』『崩壊:スターレイル』でお馴染みのHoYoverseが送る、期待の最新タイトル。UIのオシャレさ、ビジュアルの鮮烈さなどが、正式リリース前から大きな話題を呼んでいる。 【この記事に関連するほかの画像を見る】 そしてなんと今回、『ゼンゼロ』のプロデューサーを務める李振宇(リ ジェンユー)氏にお話を伺うことができた。しかもインタビュー場所、なんとシンガポール。いくらHoYoverseの本社オフィスがシンガポールにあるからって……なんだか豪華なインタビューですね! 今回お聞きしたのは、主に『ゼンゼロ』を作ろうと思った理由や、きっかけについて。ゲームの企画立ての段階から、実は元々『崩壊3rd』のチームに所属していた李さんのエピソードなど……『ゼンゼロ』制作の舞台裏をいろいろとお聞きしました。 7月4日に正式リリースを控えている『ゼンレスゾーンゼロ』。 今作を楽しみにしている方も、まだ始めようか迷っている方も、ぜひこの記事で李さんの今作にかける熱い思いに触れてほしい。きっと、『ゼンゼロ』を遊びたくなるはず! たぶん! 聞き手・文/ジスマロック 編集/実存 ■『ゼンレスゾーンゼロ』が立ち上がった経緯と、きっかけ ──まずお聞きしたいのですが、『ゼンレスゾーンゼロ』(以下、ゼンゼロ)というタイトルは具体的にいつ頃制作が開始されたのでしょうか? また、「どういった経緯で立ち上がったのか」も、合わせてお聞きできればと思います。 李氏: 今作は2020年に制作が開始されました。そして『ゼンゼロ』は「より幅広い層にアクションゲームを楽しんでほしい」という思いから、制作を始めました。当時から『崩壊3rd』などのアクションタイトルがあったのですが、そこよりもさらに幅広くアクションを楽しんでもらおうと考えたんです。 その上で、私自身としても「魅力のあるアクションゲームを作ること」に憧れがあって……そんな「自分が作りたいもの」としての側面もありました。 ただ、制作当初は会社としても明確な計画などは存在していませんでした。その上で開発リソースを与えてもらい、本格的な『ゼンゼロ』の制作がスタートしました。 ──そんな経緯があったんですね。では、李さん個人としての「『ゼンゼロ』を作ろうと思ったきっかけ」などはあったりするのでしょうか。 李氏: 実は、私は当初『崩壊3rd』の開発チームに所属していました。『崩壊3rd』ではアニメーションやPVに関連する部署のチームリーダーを担当していたんです。 だから、『崩壊3rd』の頃からアクションタイトルには携わっていたのですが……私個人としては「このアクションはもっとよくできる」「さらなる改善の余地がある」と考えていました。とにかく、より多くの人に「アクションの楽しさ」を伝えたかったんですよね。 それが私個人のきっかけとなり、「『ゼンゼロ』を作りたい」と強く思いました。そこから『崩壊3rd』の開発からは離れてしまいましたが、『ゼンゼロ』の製作の後押しをしてくれた会社の信頼やサポートには、すごく感謝をしています。 ──李さんの強い気持ちが、『ゼンゼロ』の制作に繋がったんですね。ちなみに、企画当初の開発メンバーにはどういった人が集まっていたのでしょう? 李氏: たしか最初は、十数人で開発をしていました。 そして、実はすべてのメンバーがゲーム開発の経験者というわけではなくて……一部は、そもそもゲーム業界で働いたことのない人もいたんです。 たとえば、その中のひとりは私の高校時代の友達だったりします。 元々映像制作の仕事をしていた人で、私と同時期にHoYoverseに入社しました。そこで「じゃあ今度はゲームを一緒に作りましょう」と話し、その人はゲーム制作の勉強をし始めました。『ゼンゼロ』を制作する中で、徐々にゲームの勉強を重ねていましたね。 他にも、アニメーションを担当している人は長年の友達ですし、UIなどのデザインをしている人も大学の同級生です。あとは……音楽も大学の友達が担当していますね(笑)。 ──それは中々面白いメンバー構成ですね(笑)。 李氏: ある意味、初期の開発チームのメンバーは気心の知れている人間というか……志が通じ合っている人たちが集まっていました。だから、プロジェクトを進めている時も、お互いの考えていることがすぐにわかるんですよね(笑)。 そういったところは、全員で一丸となって作り上げられてきたと思っています。 ■「幅広い層にアクションを楽しんでもらう」ために、どうした? ──さきほど「幅広い層にアクションを楽しんでもらう」ことが『ゼンゼロ』の根幹にあるとおっしゃられていましたが、その「幅広い層にアクションを楽しんでもらう」にあたって、なにか強く意識されたことなどはあるのでしょうか? 李氏: まず、私自身たくさんのアクションゲームをプレイしてきました。そのすべてが楽しいタイトルではあったのですが……同時に、アクションゲームには「入りづらさ」もあると感じていました。たとえば、「操作の難しさ」によって、アクションゲームにハードルの高さを感じてしまう方もいますよね。 だからこそ、アクションゲームを遊ぶ時はプレイヤー自身が「時間をかけて学習する」必要があると考えています。プレイを始めて、少しずつアクションが上達する……そんな学習と時間の経過こそが、アクションゲームの根幹だと分析しています。 ただ、それではユーザーが「アクションの面白さ」に辿り着くまでに、ゲームから離脱してしまうこともあります。そこを解消するために、今作では「プレイヤーにとって魅力的な要素を細かく分けて、初期に入れこむ」といった方法を採っています。 李氏: 要するに、そのゲームを始めて、すぐに「このゲームは面白い!」と感じてもらい、そこから少しずつゲームの難易度が上がっていく。この一連の流れを今作では「ゲームの学習時間」だと定義しています。 だからこそ、最初に面白いと感じてもらえなければ、その学習時間そのものが発生しないんです。そのためにキャッチーな要素などをゲームの初期に配置し、そこからプレイヤーにはいろいろなテクニックなどを学習してもらえればと考えています。 ──そこの「最初に面白いと感じてもらえる要素」は、具体的にどういったものになるのでしょうか? 李氏: やはりアクションゲームですので、「実際に操作した時に喜びを感じられる要素」を重要視していました。そしてアクションゲームにおいては、「攻撃」と「防御」が主な行動になります。その攻撃と防御の気持ちよさを、「最初に面白いと感じてもらえる要素」として意識しました。 ただ……アクションゲームの「守る」という行動は、操作が難しいことが多いんですよね。その「守りの難しさ」に、初心者やアクションが苦手な方はハードルを感じてしまうこともあるのではないかと思います。 一方で「攻撃する」という行動は、そこまでハードルの高さは感じないはずです。そこで、「攻撃の技をゲームの序盤に入れ込もう」と判断しました。たとえばQTEによる連携技などが、わかりやすい例ですね。 その攻撃の手触りをユーザーが面白いと感じられるところまで進んだら、今度は「守る技」がシステムとして登場してきます。「極限回避」【※1】や「極限支援」【※2】などが、その例ですね。ユーザーのみなさまがアクションゲームを楽しめるように、段階を踏むようなゲーム作りを意識していました。 李氏: しかし、「簡単なアクションゲームは奥深さが足りない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。そこで『ゼンゼロ』をプレイされた時に、簡単すぎると感じてしまわれるかもしれないのですが……私の考え方は、それとは逆なんです。 なぜなら、「プレイヤーが遊び方を理解するまで、複雑なシステムを提供してはいけない」と考えているからです。だからこそ、まずは攻撃を中心とした連携技などにより、『ゼンゼロ』のアクションを理解してもらう。そこから少し難しい「守りの技」を覚えてもらうようにしています。 この「学習のサイクル」を、開発において重要視していました。私たち開発チームも何度もテストを重ねた上でバランスを調整しておりますので、ゲーム初心者やアクションの経験が少ない人も、『ゼンゼロ』の学習のサイクルに基づいた上で遊んでいただければと思っています。 ■街、ゲーセン、プラットフォーム……気になる『ゼンゼロ』のあれこれ ──『ゼンゼロ』は「六分街」などの、探索できる都市フィールドも作りこまれていますよね。正式リリース後も、ああいった都市のフィールドは増えていくのでしょうか? 李氏: 実は、クローズドβテストの段階で、「六分街」以外の都市フィールドは制作していました。そして正式リリースの際に、新たな都市フィールドも登場します。 メインストーリーを勧める中で、少しずつ主人公たちが生活しているエリアも拡大していき、新たなフィールドが登場したりします。任務やクエストの内容によっては、また別のフィールドに移動することもありますね。 たとえば、今作に登場する「白祇重工」という陣営にも、専用の「工事現場」のフィールドが用意されています。あのフィールドはメインストーリーを進める中で解放されるのですが……こういった形で他の陣営が登場すると、その陣営の特徴を反映したフィールドが解放されたりします。 もちろん、フィールド以外にもイベントや新コンテンツなどが正式リリース版では追加されていますよ! ──今作には、実際にミニゲームを遊べる「ゲームセンター」も登場していました。街などのフィールドと同じように、ゲームセンター内のタイトルも更新されていくのでしょうか? 李氏: はい。同じくゲームセンターも、更新していく予定です。 そして『ゼンゼロ』というタイトル自体、常に「進歩すること」を試みています。それはフィールドやゲームセンターだけでなく、美術や細かい仕様なども含め、私たち開発チームがさまざまなフィードバックを経た上で、最適化していくべきだと考えています。 ──『ゼンゼロ』は現在スマートフォン・PC・PS5での展開を予定されていますが、Nintendo SwitchやXboxなどの別プラットフォームでの展開は考えられていますか? 李氏: 可能性はゼロではない……と思いつつも、現時点では何も決まっていません。 『ゼンゼロ』は現在配信を予定しているプラットフォーム上でのゲーム体験を重要視し、開発しています。だからこそ、私たち開発チームは「そのプラットフォーム上で優れた体験ができるゲーム」を提供したいと考えています。その体験が欠けていると、ユーザーのみなさまにとっても不公平になってしまいます。 そのため、今後の開発が進むにつれて、他のプラットフォームでの配信もいずれ可能性が出てくるのではないか……と考えています。その実現に向けて、努力していきます。何より、私自身も任天堂さんのファンですからね(笑)。 ■開発中に起きた「人生で一番忘れられない瞬間」とは? ──李さんがゲーム開発において、ディレクター及びプロデューサーを担当されるのは今回が初めてだとお聞きしました。実際にゲーム開発のトップに立たれてみて、心境はいかがでしたか。やはりプレッシャーなどは感じられましたか? 李氏: 開発の途中、さまざまなプレッシャーを感じていましたね。その中でも大きかったのは、開発当初に感じていた「どうすれば面白いゲームを作れるのか」「どうすればプレイヤーにとって面白いと感じてもらえるか」が、気持ち的には大きかったですね……。 ただ、正式リリースが近い今の段階で感じているのは、それとは少し違うプレッシャーで……たとえるとしたら、「料理人が料理を作り、ようやくそれをお客様に提供する直前」といったようなプレッシャーを感じています。「この料理がお客様にとって十分なものであるか」という心配がありますね。 やはり私たち開発チームとしては、商品というものは常に「クオリティを高める余地」が残っていると感じています。現在のものが、さらに良いものになれるかどうかは……永遠に追及していく課題なのだと思います。 だからこそ、謹んで、そして緊張感を持ったうえで、『ゼンゼロ』をお客様に正式リリースさせていただきます。 ──最後に、李さんの「『ゼンゼロ』を制作する中で最も印象的だったエピソード」をお聞きできればと思います。 李氏: 最も忘れられないことは、「デモ(プロトタイプ)が社内で通過した時」ですね。あのデモ版が通過した日に、『ゼンゼロ』が正式なプロジェクトとして立ち上がりました。だから、このプロジェクトを立ち上げられたこと自体に、すごく感謝しています。 やはり、HoYoverseの社内ではすごく厳しい「評価の基準」があって……実際のゲーム内容や作り方に至るまで、そのタイトルのクオリティに対して厳しいチェックが行われます。 その社内チェックも控えていたため、デモ版を制作している時は「この限られた人数で、こんな規模感のゲームを作っていけるのか」ということを、すごくプレッシャーに感じていました。 だからこそ、やっとデモ版が社内の審査で通過したあの瞬間は……もう一生忘れられないと思いますね。 ──『ゼンゼロ』はそういった困難を乗り越えたうえで、正式リリースに至るんですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました! クローズドβテストなどで『ゼンゼロ』を触る中、ずっと個人的に気になっていたのが……「これはどんな開発チームで作っているんだ?」ということでした。細部までこだわり抜かれたUIや、アニメーションのカットシーン。 すごく連携の取れたチームで制作されていることは感じていたけど……まさか李さんのリアル友達が何人もいたとは。ちょっと同人サークルっぽくて、良い雰囲気だと思います。 そんなこだわりと、アクションゲームにかける熱い思いが詰め込まれた最新作『ゼンレスゾーンゼロ』は、7月4日に配信予定! HoYoverseの厳しい(らしい)社内審査を超え、数回に渡るテストを経て、ようやく配信されます。 このこだわりと完成度の高さ、ぜひ堪能してください。
電ファミニコゲーマー:
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