ザックジャパン 狙い通りのプレーで善戦
■香川の動きにより遠藤がフリーに そうしたオランダの乱れをさらに大きくさせたのが、後半から出場した遠藤保仁と香川真司だった。 左サイドから流動的に動く香川と、巧みにボールを出し入れし、広範囲に動いた遠藤。香川が神出鬼没の動きでオランダを翻弄し、遠藤はほとんどフリーの状態でプレーすることができていた。 本田がシュートを放った50分過ぎの場面は、遠藤の真骨頂だろう。味方とのパス交換で相手DFを動かし、フリーになった本田を見逃さずにパスを通した。本田のシュートはポストをかすめたが、こうして徐々に主導権を確かなものにしていった。 60分には遠藤のサイドチェンジから内田篤人、岡崎慎司、本田圭佑、大迫のパス交換から本田のゴールで同点に追いついた。「この合宿ではゲーム形式が多かったから、みんなの感覚をすり合わせることができた。イメージ通りのゴールだった」と内田は明かす。さらにその7分後には、ドリブルで仕掛けた香川が左足でフィニッシュを放った。 ■効果的だった前線からのプレス こうして波状攻撃が仕掛けられた背景には、この試合のテーマのひとつ、前線からのプレスがあった。オランダが最終ラインでボールを回すと、大迫や岡崎がプレッシャーを掛けに行く。闇雲に追いかけ回すわけではない。大迫がコースを限定しながらサイドに出させ、そこを岡崎や香川が狙い打つ。大迫が相手の真横から近づいていくことが多かったのは、サイドに追い込もうとしていたためだ。「大迫がコースを切ってくれたから、後ろとしてはパスコースを限定したすかった」と今野泰幸は振り返っている。 プレッシングや攻撃に連動性があったのは、選手たちのコンディションが良かったからだろう。指揮官が求める高いレベルのインテンシティが久しぶりに発揮されたゲームだった。ザッケローニ監督は「前後半通じて、自分たちが狙っていたプレーが高い精度とスピードで出せた」と、この日の出来を讃えていた。 だが、そうした指揮官の言葉とは裏腹に、試合後の選手の表情は晴れやかなものではなかった。手応えを口にするより反省の言葉が聞かれるほうが多かった。前半の内容が良くなかったこと、後半にあれだけ押し込みながら勝ち切れなかったことへの悔みである。