織田裕二“司馬”が突き落とされ院内の権力争いが激化<振り返れば奴がいる>
人間同士の嫉妬を描く作品は怖い。上を目指そうとする人にとって、“目の上のたんこぶ”的な存在を早く消したいと願う気持ちは誰にでもあるけれど、それを直接言動に表す人と胸にしまっておくタイプがいる。そんな男同士の絶妙な嫉妬バトルを描いた名作が、織田裕二と石黒賢主演の「振り返れば奴がいる」(フジテレビ系)だ。大病院内の医師たちのライバル関係が激化し始める第5・6話を紹介する。(以下、ネタバレが含まれます) 【写真】織田裕二、主演作「IQ246~華麗なる事件簿~」で石黒賢と再共演 ■脚本家・三谷幸喜が初めて手掛けた連続ドラマ 現在FODでは「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」キャンペーンを開催中で、少し昔の様々なヒット作を見ることができる。10月5日(土)まで第1~3話が無料公開されている「振り返れば奴がいる」は、今から31年前に放送されたハードボイルド系医療ドラマ。 大病院に赴任してきた熱血漢の青年医師・石川(石黒賢)と、若くして天才的なメスさばきを誇る司馬(織田裕二)が、医師としての信念を巡って激しく衝突していく様が描かれる。公開中の映画「スオミの話をしよう」で監督・脚本を務める三谷幸喜が初めて脚本を担当した連続ドラマ作品としても有名だ。 第5話は、石川が参事に抜てきされる。司馬は関心がないという顔をするが、内心は面白くない。司馬が当直の夜、ガス漏れ事故でケガ人が五人も運び込まれた。重症の人から先に応急処置を施し、石川と司馬が重傷患者2人を手術する。 ケガの軽そうな老人のモエ子(野村昭子)と小学生の順一(宮野翔太)は、後まわしとなった。モエ子は早く家に帰りたいが、「もうちょっと待ってくれ」と石川が謝る。やっと手術が終わった時、順一が足を押さえて苦しみだし、さらに、モエ子の容態も急変してしまう。 ■他人の出世が気に入らない者たちによるワナ 続く第6話では、診察ミスで老婆を死なせた石川がすっかり意気消沈。しかし、老婆の息子と話し合った司馬が、相手を金でうまく納得させ、石川の参事昇格が流れてしまう。代わって司馬が参事になることになる。裏で司馬がいろいろと小細工したという噂が病院内に広がった。石川は仕事が手につかず、稲村(佐藤B作)のすすめで人間ドッグに入る。主任の平賀(西村雅彦)は、司馬の昇格が面白くない。司馬を階段で突き飛ばした。司馬は右手をねんざして手術の執刀ができなくなってしまう。 石川の昇進話により一気に進んだ病院内の権力争い。患者の死や、自身の不調が重なり、本領発揮ができない医師たちも決してパーフェクトヒューマンなわけではないという部分が色濃く描かれる。 「振り返れば奴がいる」をどんなドラマかと聞かれたら“医師と患者の心の交流”や“厳しい医療現場の現実”などではなく、医師同士、男同士のバチバチとした激しい対立と答える人が多いだろう。加えて、ここから今作はさらに、石川の病や司馬がなぜ憮然とした態度の医師になってしまったかなどのエピソードが盛り込まれ、衝撃的なラストまで突き進んでいく。30年以上の間、エンタメ好きを満足させてきただけある存在感の強い作品だ。