ロマンス詐欺で新たな手口、“人間そっくりのAI”の動画にだまされる被害。当局が注意を呼びかけ
イギリス在住の60代女性が、出会い系アプリを通じて「ロマンス詐欺」に遭い、金銭を騙し取られていたことがわかった。イギリスの法律事務所は、ネット上に3本の動画を公開。女性を騙す際に使用された生成AIの映像を投稿し、注意喚起をしている。 【AI動画】被害女性が騙された、実際の映像がこちら
動画には、カメラに向かって話す1人の男が映っている。だが、これはAIが生成した映像だ。 男は「おはよう。今、僕がかかえている問題について君にも知っておいてほしいんだ」と切り出し、「君のことを心から愛している。残りの人生を君と過ごすのが待ちきれない」などと甘い言葉で騙した。 口の動きや表情に若干のたどたどしさがあるものの、その動きはほぼ自然で、違和感はほとんど感じない。
被害に遭った60代の女性は10月、自称61歳で退役間近の米軍関係者「マイク・マーディー」という人物からメッセージを受け取った。この人物は、5年前に亡くなった妻の遺産を老後の資金にして、一緒に暮らしたいと持ちかけてきたという。 女性の元には、亡くなった妻とのツーショットや「愛している」と書かれた手紙、宝石などの装飾品などが実際に届き、女性はこの人物をすっかり信用しきっていたようだ。 最終的に、この人物は「60万7000ポンド(約1億2000万円)が入ったカバンを送りたい」「開けるためには、いくつかの料金を支払う必要がある」と要求してきたという。 英タイムズ紙によれば、この人物は、秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」を使用し、銀行口座などを教えてきた。女性は初めに50ポンド(約1万円)を送金するも、カバンは届かなかった。その後も、約1000ポンド(約20万円)、約3600ポンド(約70万円)を立て続けに支払った。 さらに追加で5000ポンド(約100万円)を支払うと、カバンが届いた。だが、カバンを開けるためにはコード代が必要だという。
この人物は「これが最後の支払い」だと主張。女性は10月31日、渋々1万ポンド(約200万)を送金したが、鍵のコードは送られてこなかったという。 不審に思った女性がカバンを開けると、そこにはただの白紙の束が入っていた。女性がこの件を問いただすと、この人物は「愛を試すためだった」と主張。ようやく詐欺に引っかかったことに気づいたという。 被害女性は、「詐欺師がこんな動画を作ったと思うと本当に恐ろしい。詐欺にあったのは生まれて初めてです。家の模様替えのためにお金を貯めていたのに。もう安心できません」と語っている。 イギリスで新たに施行された法律により、被害女性には現在、金融機関からの弁済が検討されている。