2024年、屋外広告 は人々の足を止めさせる「デジタルストリートアート」へと進化する
記事のポイント 2023年、ロレアルのメイベリンやジャックムスなどの大手ブランドが、屋外広告にデジタルアートを融合させる斬新な取り組みを展開。 メディアプラス・グループのジャスミン・プレッソン氏によると、この手法は消費者の注目を集め、マーケターの関心も高まっている。 クリエイティブエージェンシーであるスーパーヒーローズのCCOロジェ・ビーバーバーグ氏は、この新しい広告手法に大きな可能性を見ており、エンゲージメントの高い拡張屋外広告の実現を期待している。 2023年はまるで本物かのようなデジタルアートと融合した屋外広告が話題になった。 ロレアル(L'Oreal)傘下のメイベリン(Maybelline)やファッションブランドのジャックムス(Jacquemus)など、大手マーケターがアーティストと手を組み、実世界でもソーシャルメディアでも目を引く、奇抜な屋外広告を制作したためだ。 エージェンシー幹部らによると、これはおそらくほんの始まりにすぎない。屋外広告とデジタルアートの要素をミックスする手法は、予想より日の目を見るのに時間がかかっているものの、2023年に注目を集めたことで、マーケターたちはこの種のアクティベーションに以前よりはるかに乗り気になっているという。
「消費者の足を止めさせる力がある」
メディアエージェンシーであるメディアプラス・グループ(Mediaplus Group)の最高戦略責任者、ジャスミン・プレッソン氏は、「我々の売り込みは昨年と同様だが、今は広告主がよりオープンになっている」と話す。「予算が限られるなかで、ただインプレッションを買うのでなく、いかに少ないリソースでインプレッションを獲得するか考えることに前向きだ」。 また、前出のメイベリンやジャックムスのような大手ブランドがこの分野で躍進し、デジタルアーティストやエージェンシーと組んで、その奇妙さに人々が足を止めたり、ソーシャルメディアでシェアしたりするものを制作していることも後押ししている。「ほとんどのブランドはアーリーアダプターではないため、少ないリソースを生かす先進的なブランドや、予算の大きい大手ブランドが投資しているのを見ることは、それに検討する価値があるとマーケターが判断するための十分な材料になる」とプレッソン氏は述べている。 メイベリンの拡張屋外広告は、ロンドンの地下鉄で同ブランドのマスカラを宣伝する内容だ。駅を出発するところらしい電車の車体に、つけまつ毛が取り付けられていて、進む先にあるマスカラブラシに接触し、まつ毛にマスカラが塗られる。もちろん、ブランドは実際にこれを行ったわけではなく、デジタルアーティストの力を借りてこの効果を作り出した。これは、ブランドが検討しているこの種の取り組みの一例にすぎない。 グローバルエージェンシーであるスーパーヒーローズ(SuperHeroes)の最高クリエイティブ責任者、ロジェ・ビーバーバーグ氏は、このメディアには消費者とマーケター両方の注目を集める、大きな「ストッピングパワー(人を立ち止まらせる力)」があると考えている。そこで同氏は、デジタルストリートアーティスト集団のジミー(JIMMY)を設立し、ブランドとの仕事を通じて、急成長するこの広告媒体に注力している。今秋には、フェンティ(Fenty)とプーマ(Puma)のために、ニューヨークにあるハイライン公園など、実在の場所にCGIのサッカーボールを組み合わせた新たなキャンペーンを手がけた。 ビーバーバーグ氏は、これは「まだ非常に若いカテゴリー」であり、ファッションやライフスタイルブランドが先陣を切っているが、エンターテインメントや消費財ブランドも関心を寄せていると話す。マーケターは「人の心をつかむソーシャルコンテンツ」を制作することに注力しているが、簡単なことではない。そのため、エンゲージメントの高い拡張屋外広告といったものの魅力が増している。