大規模な贈収賄に発展したリクルート事件の教訓から1994年に政治改革が行われて以降も、「政治とカネ」を巡る問題は何度も国政選挙の争点になってきた。 　しかし、ここまで自民党の組織的な不正があらわになり、深刻な政治不信を招いたのは過去30年で初めてだろう。 　昨年12月に表面化した自民派閥の政治資金パーティー券収入の不記載・虚偽記入の問題は、派閥ぐるみの裏金作りが党内で横行していた実態を浮き彫りにした。衆参両院に特別委員会が設置され、6月に改正政治資金規正法が成立した。 　だがこの間、私たちが見たのは、真摯（しんし）な反省に立ち、真相究明と再発を防ぐ抜本改革に尽くすのではなく、責任を事務方に押し付ける政治家と、既得権を守ろうとする自民の姿だった。 　改正法は、パーティー券購入者の公開基準や政治家の責任強化などの見直しにとどまり、不透明なカネの流れを生む「抜け穴」をふさぐ具体策は大半が先送りされた。「ザル法」との批判が今もやまないゆえんだ。 　中でも、業界との癒着を招きやすく、94年の法改正で「5年後に禁止」と付則に記された企業・団体献金の禁止は、主要野党が衆院選の公約としたのに対し、自民は触れてもいない。 　代替の政治資金として、税金が原資の政党交付金制度をつくったはずである。石破茂首相は「大事なのは政策が左右されないこと。献金自体は必要」と言うが、「公金との二重取り」が続く現状をいつまで放置するのか。 　政党から政治家個人に支給され、使途の公開義務がない「政策活動費」は、そっくり温存された。野党側は廃止を主張し、公明も使途の公開義務化を唱えたが、自民が抵抗。衆院で維新の協力を得るため「10年後の領収書公開」を付則に加えたが、その中身は詰まっていない。 　公約で自民は「将来的な廃止も念頭」とするが、石破氏は党首討論で「今回の選挙で使うことはある」とした。きのう修正したが、本気度が疑われる。 　政治資金の透明性を高める上で鍵を握るのが、監視に当たる「第三者機関」である。改正法の付則で設置を記したが、時期や制度設計は先送りされた。 　民間の政策提言組織「令和国民会議」は、独立性と行政処分などの権限付与を求める。野党の主張とも通じるが、自民も考え方を明確にすべきだ。 　裏金事件では、支持者の飲食代にも使われていた実態が浮かび上がった。「政治にはカネがかかる」という開き直りが政治をゆがめてきたのは間違いない。 　地に落ちた信頼を取り戻すため、政治資金の出入りを透明化し、金権体質と決別する仕組みをつくれるか。「令和の政治改革」の中身を当事者の自民こそ明確に示さなければならない。