英紙がバッサリ「日本でユニコーン企業が育たない単純明快な理由」
日本には生育不良型の小粒のスタートアップ企業「ピュニコーン」が多い。企業価値10億ドル以上の未上場スタートアップ「ユニコーン」を創出するためには、活気あるビジネス環境づくりが急務だと英紙が指摘する。 【画像】2024年世界でもっとも大きな評価額のスタートアップ企業
発育不良な「ピュニコーン」とは
人工知能(AI)で睡眠ビッグデータ解析を行うヘルスケアのスタートアップ、エコナビスタが2023年7月に、誕生間もない東証グロース市場に上場すると、同社の株価は一気に上昇した。しかしほどなく、下落が始まり、同社は時価総額の60%を失った。 エコナビスタはいま、日本の広大な産業界に生息するきわめて不思議な企業群の一員としてさまよっている。その群れとは、悲しげな鳴き声をあげる「ピュニコーン」だ。 ピュニコーン(punycorn)のpunyは「未熟で弱々しい」という意味である。つまり、ピュニコーンは成長が止まってしまったユニコーンなのだ。 このピュニコーンが進化し繁殖するまでの過程は、バブル絶頂期を経てからの35年で、日本がリスクと野望、イノベーションにどう向き合ってきたかを如実に物語っている。デフレを脱却し、成長の必要性がいっそう強く叫ばれているいまの日本でおいては、こうしたピュニコーンの存在と、ピュニコーンが生き残れる環境がこれまで以上にネックとなるだろう。 輝かしい角をもつ一人前に成長したユニコーンと、ユニコーンを生み育むエコシステムがいかに望ましいか、日本は充分に理解している。ユニコーンは、ベンチャーキャピタル(VC)業界で誕生した造語で、時価総額が10億ドル(約1500億円)を超える未上場のスタートアップを指す。 ユニコーンを育む環境を形成するのは、大胆不敵さにますます磨きをかけているVC投資だ。その根底にはディスラプション(創造的破壊)、合意にもとづく破壊、必要に応じた再発明への欲求、そして何よりも根本的な点として、事業規模拡大というとてつもなく大きな野心がある。
日本に「ピュニコーン」が多い理由
日本は遅ればせながら、ある結論に達した。それは、自分たちはユニコーンの条件を満たすビジネスを生み出すそれ相応のルートを整えるのがあまり得意でなく、そうしたルートを早急に整備しなければならない、という結論だ。 有力なロビー団体である日本経済団体連合会(経団連)は2022年春、2027年までに国内スタートアップを10万社以上、ユニコーンを100社に増やすよう求める政府への提言を発表した。こうした緊急呼びかけと、慌てふためいた政府による多額のスタートアップ支援にもかかわらず、直近のデータによると、日本のスタートアップ資金調達総額は2022年の9700億円から、2023年には8030億円に減少した。 このままいけば、2024年には6500億円とさらに落ち込む見込みだ。2027年までにユニコーン100社という目標が確率は低いながらも達成可能だと考えている人を、小規模で成熟しきっていない日本のVC業界で見つけるのは難しいだろう。 日本でユニコーンが誕生しないのはなぜか。その理由をもっともわかりやすく説明するとすれば、レイターステージ(事業がある程度成熟した段階)に達したスタートアップへの支援不足だ。しかし、シリコンバレーにおいては、レイターステージでの資金調達がユニコーンに至る道だと言える。 日本のスタートアップは、しかるべきタイミングよりずっと早い段階で株式公開(IPO)を迫られる。ところが、そうしたスタートアップの大半は、IPOという飛躍に向けた準備が商業的にも心理的にもできていない。おまけに、市場が遅れを取り戻す方向へともっていくことは現実的に見て不可能だ。東京を拠点とするVCのトップの言葉を借りれば、企業の歩みはIPOを機に本格化すべきだが、日本では歩みがIPOで終わってしまうことがあまりにも多い。 ここで待ち構えているのがピュニコーンという立ち位置だ。時期尚早であるにもかかわらず上場したスタートアップは、たちまち成長株という評価を失い、上場企業であるがゆえにその野望は冒険的ではないとみなされる。 時価総額が数億ドルを超えることなど決してなく、多くはその手前止まりだ。東証グロース市場250指数を構成する企業のうち、2024年に株価が上昇したのはわずか3分の1に過ぎない。指数全体を見ても、2024年には年初来で14.5%近くも下がっている。一方、日経平均株価指数225は株価が同率で上昇している。