【もったいないバナナ】スターバックスが“規格外バナナ”を使ったメニューを展開するのは「現代のビジネス戦略として理想的」と評価される理由
環境への配慮と会社の利益の両方を実現
イギリスの研究者テリー・ニューホルムが行った研究によると、環境や社会のことを考えて商品を選ぶ「倫理的な消費者」が増えている。調査会社Mintelの調査では、47%もの人が人権問題や環境問題を商品選びの重要な基準にしているという結果が出ている。 このような消費者の考え方を踏まえると、スターバックスの「もったいないバナナ」キャンペーンは、ビジネスとして非常に賢い戦略だといえる。環境に配慮している企業というイメージを高めながら、売上も増やすことができるからだ。規格外のバナナを使うこと自体は特に目新しいことではないが、それを環境に優しい取り組みとして消費者に伝える方法として、このキャンペーンは大きな効果を上げている。 面白いのは、このキャンペーンが環境への配慮と会社の利益の両方を実現していることだ。規格外バナナを安く仕入れることができれば、環境に優しい商品として高い値段で売ることで、通常以上の利益を得ることもできる。お客さんは環境のために良いことをしているという満足感を得られる一方で、スターバックスは会社としての利益を増やすことに成功するわけだ。これは、社会に貢献しながら会社も儲かるという、現代のビジネスの理想的な形の一つといえる。 このように、環境や社会のことを考えて商品を選ぶ人たちの気持ちを理解し、それに合わせた販売方法を考えることは、今のビジネスで成功するための重要なポイントになっている。「もったいないバナナ」キャンペーンの取り組みは、環境への配慮や社会貢献に目が向きがちだが、実際に大きな利益を生み出す戦略として評価できるのである。 実のところ、本当に社会に貢献しているかどうかは、ビジネス的にはあまり関係ない。スターバックスのこの取り組みは、「正しいことをしている」ように見えている時点で、すでにビジネス的な価値を生んでいるということだ。環境のことを考えて規格外のバナナを使い、食べ物を無駄にしない活動をしているように評価を受けることが大事なのだ。 このような情報戦略は、今後も多くの企業で取り入れられていくのだろう。それぐらい日本企業もしたたかに生き残っていくべきである。 【プロフィール】 小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。