意外と知らない? エスカレーターの「片側」を空けてはいけない根本理由
歩行リスクの増加
日本エレベーター協会は、「エスカレーターでの歩行」をしないように呼びかけている。普通、エスカレーターの取扱説明書を見てから乗るという人はいないと思うが、インターネット上で入手可能なエスカレーターの取扱説明書をいくつか見てみたところ、いずれにも歩行が禁止であること、歩行してはいけないことを利用者に呼びかけるべきであることが明記されていた。 【画像】えっ…! これがエスカレーターで「歩く人」の割合です(計9枚) ・エスカレーター上を歩くこと ・片側を空けること にはどのような問題があるのだろうか。 エスカレーター上を歩行すると、転倒のリスクが高まる。本人が転びやすくなるだけではなく、立ち止まって利用している人との接触によって、その人を転倒させてしまうリスクも高まる。 また、歩く人のために片側に寄ってしまうと、エスカレーターの輸送能力が半減してしまう。このため、設計上必要な輸送能力が確保できずに、ホームなどに人が滞留して別のリスクを高めてしまう。 リスクが高まらなくても、効率が悪いので全員の平均移動時間は長くなってしまう。立ち止まる側が左右のどちらかに固定されてしまうと、何らかの事情で片手を使えない人がベルトにつかまれないため、こういった人の転倒リスクも高めてしまう。さらに、人が片側に寄ることで荷重が偏るため、エスカレーターの設備が早く痛んでしまうという問題もあるようだ。 こうした問題を受け、近年ではエスカレーターの歩行禁止を条例化する自治体が増えている。鉄道事業者等も、エスカレーター上で歩行しないように呼びかける取り組みを拡大している。
片側空けの心理
にもかかわらず、エスカレーター上を歩く人が後を絶たないという報道や書き込みをよく見かける。急いでいる、歩くことが習慣になっているなど、エスカレーターを歩く人にはさまざまな事情があるのかもしれないが、実は 「みんなが片側を空けてくれているから」 という理由で歩いている人もいるのかもしれない。 私たちは、明文化されたルールに従うこともあるが、そうではなく、その場にいる多くの人たちの行動を見て、自分がどう振る舞うべきかを判断して行動している。こういった、明文化されていないルールは、心理学では 「記述的規範」 と呼ばれている。記述的規範は世の中の至るところに存在している。 「こういう状況ではこういう服を着たほうがいいかなとか」 「上司がまだ帰ってないので先に帰りづらいなとか」 「同僚はみんな旅行の後にお土産を買ってくるから、私もお土産を買っていかなきゃいけないかな」 といった具合である。