移籍市場最高の先発投手とゴールドグラブ4度の名手獲得に成功。少ない犠牲で戦力を向上させたドジャースの“トレード巧者”ぶり<SLUGGER>
「インパクトのある先発投手の獲得は最優先事項だった。そして、ジャックはまさにそういった選手。制球力、球の質、空振りを奪う力。10月の戦いで戦力になる実力があり、我々のローテーションにピッタリとはまる」とはブランドン・ゴームズGM。交換要員として手放した有望株は、21歳の両打ち捕手タイロン・リランゾと24歳でメジャー昇格間近の遊撃手トレイ・スウィーニーの2人で、両者ともMLB.comの有望株トップ100には入っていない。フラハティより明らかに格が落ちる菊池雄星獲得のためにアストロズが手放した選手たちよりも犠牲は少なく、ドジャースの層の厚い下部組織にとっては痛くない出費だ。 フラハティ以外にも、ドジャースは積極的に補強に動いた。 29日にカーディナルス、ホワイトソックスとの三角トレードで俊足好守の便利屋トミー・エドマン、剛腕リリーバーのマイケル・コーペックを獲得。内野については、昨夏に続いて二遊間を守れるアーメッド・ロザリオも補強した。さらに、DFA(40人ロースター外)とした中継ぎ左腕ライアン・ヤーブローとの交換で、ゴールドグラブ4度の名手ケイビン・キアマイアーを獲得したのも好補強だ。今季の外野陣はセンターとレフトの守備に問題があり、キアマイアーの守備力は1戦必勝のポストシーズンで強力な武器になるはずだ。 唯一、心残りがあるとすればリリーフ投手の補強だろう。マーリンズのタナー・スコットを狙っていると報じられていたが、それを察知してか同地区のパドレスがかなりの高値で獲得に成功した。とはいえ、7月半ばにウェーバーで拾った元トップ有望株ブレント・ハニーウェルが好投。“魔改造”に定評のあるドジャース指導陣の下で、防御率4点台後半ながらスペックの高さは誰にも負けないコーペックが化ける可能性は十分にある。 現地メディアの評価を見ると、ESPNはドジャースをデッドライン・トレード最大の勝者とし、MLB.comでも2番手に挙げている。5人の選手を補強しながら、本当の意味でのトップ有望株をほぼ放出に済んだ(例外はホワイトソックスに放出したミゲル・バルガスくらいか)ことが大きい。菊池、スコットなど選手によっては意外なほど値段が吊り上がった今夏の市場でも上手く立ち回ったあたりはさすがドジャースといったところか。 だが、本当の勝負はこれから。新たに獲得した選手が活躍し、頂点まで勝ち上がって初めて本当の意味での「勝者」となる。新しい戦力を得て、ポストシーズン攻略へ向けてどう戦力を組み直していくのか。いよいよシーズンはクライマックスを迎えようとしている。 文●城ノ井道人 【著者プロフィール】 しろのいみちと。会社勤めの後、渡米してMLB記者として全米を飛び回る。。日米問わず若手有望株への造詣が深く、仲間内で「日本版ファンタジーリーグ」を毎年開催し、次代のスター発掘に余念がない。
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