2024年の首都圏中学入試は、読解力や分析力が重要に! 森上教育研究所の分析会をレポート
算数は、試行錯誤の経験量が合否を分ける
次に算数の入試問題分析は、みんなの算数オンラインの竹内洋人さんが解説した。全体としての傾向に大きな変化はなく、例年通りの出題傾向だったという。ただ、難易度が高くなっているのは確かである。 解法の暗記で対応できる問題はますます減少傾向にある。過不足算(ある個数のものを数人で分けるときに、余りや不足が出てくる。この余りや不足から、人数やそのものの数を計算する問題)においてはもう典型問題が出題されなくなり、何かしらのひねりが入ってくる。過不足算の問題にひねりが入ると難易度が上がって、合否の分かれ目になる可能性が出てくる。 また、「データの活用」問題も進化している。2023年度までの「データの活用」問題は「中央値って何ですか」といった知識を問う内容だったが、今年はその先を問うようになっている。立体の問題では、難関校の難易度は変わらないが、中堅校で立体切断系の問題も見受けられるようになってきた。 どの入試にしても、根本的には「書き出す」「試行錯誤する」力が求められている。難関高だけでなく中堅校でも、高い論理性や算数の学力を問う難問が出題されている。 田園調布学園の算数1教科入試では、長文思考系の問題で、植物の幹に葉がついたイラストを提示し、葉っぱの位置などを問う問題だ。問題文は長いが読みやすく分かりやすい。麗澤では、分数の割り算はなぜ“逆にして掛けるのか”を説明させる記述問題が出た。 なお、分野を見ると、難関校では場合の数や立体の問題が増えている。中堅校では和と差が増えた。
社会で求められるのは正確な知識と資料の読み取り
社会では文教大学の早川明夫さんが登壇した。社会は全体的に易しくなり、難問奇問は極めて少ない。問題の形式では、様々なタイプの正誤問題が多い。たとえば「正しいものをすべて選びなさい」といった正確な知識が求められる問題が多くなっている。 中学受験の社会というと、小学校の教科書を軽視する傾向があるが、教科書を参考にした問題も散見されるので、教科書をしっかりと勉強しておくことも重要だ。 たとえば麻布では、江戸時代、藩校ではなく私塾へ勉強するために集まったのはどういった人たちかという問題が出たが、『小学社会6』(教育出版)に「(私塾では)武士に限らず百姓や町人も、国学や蘭学などの新しい知識を学びました」とヒントが書かれている。御三家の一角である麻布などでも、教科書をベースにした作問がなされている。 一方、中堅校では絵を示し、それを読み解かせる問題も出ている。世田谷学園では、イギリスで職人が機械の前でハンマーをふり上げている絵を示し、この絵は何をしようとしているのか、その行動の理由を問うている。産業革命で機械化され、職を失った職人が機械を壊そうとしているシーンである。これは教科書には掲載されていない絵ではあるが、産業革命がどのようなものであるか、ということが理解されていれば正解に辿り着けるのではないだろうか。良問である。 正確な知識と様々な資料を迅速に読み取る力を必要とする問題が増えている。渋谷学園渋谷では、東京新聞Webの記事を記載し、それを読ませて、「現在の世界の政治に関する説明として最もふさわしいもの」を選択肢から選ばせる。文章を読み込むだけではなく、現在の世界情勢への正確な知識や、選択肢問題を解くためのテクニックも必要な問題となっている。 全体的に「問題文を読み込まないと解けない」問題が増えており、社会も「詰め込み科目」ではなく、読解力や分析力、批判力、表現力を求めるものになっている傾向が分かる。