FRUITS ZIPPER、CUTIE STREET……KAWAII LAB.が若者に刺さる理由は「とか」にあり?
KAWAII LAB.と「とか弁」との相関性
■KAWAII LAB.と「とか弁」との相関性 少し堅苦しくなってしまったが、ここからが本題。この「とか弁」は、KAWAII LAB.の楽曲にどのような効果をもたらしているのか。以前のコラム(※3)にも書いたように、KAWAII LAB.の楽曲にはセリフ的な歌詞が多い。「とか」に限らず「じゃん」「からね」「よね」あたりも同様だと言えるが、作詞者が異なってもこれは共通であることから、作詞者の意図というよりはプロデュース側の戦略なのかもしれない。KAWAII LAB.総合プロデューサー・木村ミサの以前の対談インタビュー記事(※4)では「わたしの一番かわいいところ」の歌詞について、「詞のコンセプトとして、アイドルとファンの方との関係を書いていただいているんですけど、ファンの方がアイドルにいっぱい“可愛い”って言って肯定してあげたら、アイドルも自信を持って、《わたしもそれに気付いた!》みたいな、そういうハッピーな関係を描きたかったんですよ」と語っていたことからも、彼女がアーティスト対ファンの距離感と歌詞を密接に結びつかせて、セリフ的な歌詞を意図的に組み込んでいることが窺える。 「とか弁」もこのセリフ的な要素に含まれるとすると、「とか弁」によって演出された距離感の近さは歌いやすさや親しみやすさへとつながり、こちらも真似しやすい振り付けとの相乗効果で“わたしたちの歌”として支持されるに至ったのではないだろうか。KAWAII LAB.が現代の若者に刺さっている理由のひとつとしてまとめることができそうだ。 それにしても、距離を置くための「ぼかし表現」が、かえって距離感を近づけていることは不思議でならない。というのも、KAWAII LAB.メンバーによる「とか」を用いた歌い回しやパフォーマンスこそが絶大な支持を集めているアイデンティティーそのもので、そこには単なる文法的な傾向を超えたアーティストとファンならではの関係性が生まれているからだ。 直接的な表現が敬遠されがちな現代社会において、より多くのリスナーに楽曲のメッセージや世界観を届ける上で「とか」に代表される「ぼかし表現」は効果的で、このような断定しない言い回しが、現代を生きる若者を中心に使われる際に親近感を生み、楽曲を聴けば聴くほどまるで会話しているかのような距離感の近さを体感できる。そして「とか」は耳ざわりも良く、「どんな表情してるかなど」よりも「どんな表情してるかとか」のほうが歌詞的であるし、日常的になじみのある表現であることからやはりそこにも親しみを感じることができる。「とか」にはそんな魔力が宿っている。 ※1:https://kotobank.jp/word/%E3%81%A8%E3%81%8B-582055 ※2:https://d-tsuji.com/paper/p07/ ※3:https://realsound.jp/2024/10/post-1808649.html ※4:https://popnroll.tv/articles/28987
栄谷悠紀
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