予想裏切り二転三転、あざやかに着地 「カメ止め」監督「アングリースクワッド」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
■「山逢いのホテルで」
スイスの美しい自然の中、母と女の立場の間で揺れるヒロインを描く。監督はこれが長編デビュー作となるマキシム・ラッパズ。
アルプス近くの町に住む仕立て職人のクローディーヌ(ジャンヌ・バリバール)は、障害のある息子と2人暮らし。彼女は週に1度、白いドレスを着て山あいのホテルを訪れ、さまざまな男と一度限りの関係を結ぶ。だが、ミヒャエル(トーマス・サーバッハー)と出会い、もう一度女として生きたいと願い…。
バリバールの気品ある魅力に圧倒される。息子のためだけに生きてきた彼女の中で甘い夢が抑えがたく膨らんでいく様子が切ない。15歳未満は鑑賞不可。スイス・仏・ベルギー合作。
29日から全国順次公開。1時間32分。(耕)
■「リュミエール!リュミエール!」
シネマトグラフ(撮影・映写機)を1895年に発明し、映画の父と呼ばれるルイとオーギュストのリュミエール兄弟の映像をまとめた「リュミエール!」(2017年)の続編。
新たな作品を含む110本をまとめたドキュメンタリー長編映画で、前作に続きカンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモーが監督、脚本、編集、ナレーションを務める。
兄弟と同時代を生きたフォーレの音楽が映像に合わせて流れ、芸術作品のような仕上がりだ。何よりもフレモーのナレーションが映画史にとどまらず美学的観点からも解説しているので、映画ファンはもちろん、映画界を目指す人たちにも必見の作品。仏映画。
公開中。1時間45分。(啓)