予想裏切り二転三転、あざやかに着地 「カメ止め」監督「アングリースクワッド」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ◇ ■「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」 税務署員と詐欺師が手を組み、悪徳実業家に立ち向かう-というユニークな設定の作品。韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師~38師機動隊~」を原作に、「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督が映画化した。 生真面目な税務署員、熊沢(内野聖陽)が詐欺に遭い、大金をだまし取られた。熊沢は、犯人の氷室(岡田将生)を突き止める。だが氷室は、見逃すなら、熊沢が脱税疑惑で追う実業家、橘(小澤征悦)から脱税相当額を奪ってみせる、と持ちかける。橘にある遺恨を持つ熊沢は提案を受け入れ、仲間とともに橘を陥れる作戦を開始する。 「カメラを止めるな!」公開より先に企画された作品というが、難問を解決するチームの奮闘をどんでん返しの多用で描く-という構成は同じ。今回も無数の伏線が回収され、物語は観客の予想を裏切り二転三転した後にあざやかに着地する。実に気持ちがいい。 小心者の熊沢が橘を欺くため大物を装ううち、成長していく様子を内野が好演。天才詐欺師・氷室を演じた岡田の演技もいい。最後まで内面を読ませず、見事に観客もだまし通した。 全国公開中。2時間。(耕) ■「正体」 脱走した死刑囚が間一髪で警察の追っ手を逃れながら潜伏を続ける。彼には何か目的がありそうだ。 同名小説を「余命10年」などで人気の高い藤井道人監督が映画化。げっそりと痩せ、ぎらぎらと目を光らせながら逃走を続ける主人公に横浜流星。横浜と藤井には「ヴィレッジ」(令和5年)もあったが、はるかにすばらしい。 社会派作品と呼ぶ人が多いだろうか。小欄はファンタジーとして見た。そのほうが、この逃走劇は現実感をもつ。作品が放つ「正しいことを正しいと主張すれば信じてくれる人がいる」という強くて純粋なメッセージが、まっすぐに胸に届く。血なまぐさい場面があるが、これは完全に蛇足。 29日から全国公開。2時間。(健)