企業を追い込む「カスハラ」「ハードクレーマー」だが…企業側の落ち度も「それなりにあるケース」での〈着地点〉の探し方【弁護士が解説】
クレームを受けた企業側も「落ち度ゼロ」とはいえない場合
数年前に建築会社で起きた事例をご紹介します。 弁護士に寄せられた相談の概要は、戸建ての新築工事と、庭・壁等の外構工事の建築を請け負ったものの、最後の外構工事でトラブルになってしまった、というものでした。 筆者がくわしく話を聞いたところ、 (1)担当者の段取りが悪く、工事期間が1週間ほど遅れてしまった (2)いくつか修繕対応が必要な箇所も生じた という経緯がありました。 しかし、修繕が必要な工事はすべて修繕済み((2))であり、引越し時期には影響がなかった((1))といいます。他方、顧客側からは、それとは別に、 (3)駐車場のタイルの仕上がりが悪く、とてもこれにはお金が払えない との理由で、 (4)最後、外構工事の代金として支払う予定の298万円は一切支払わない と要求されました。 また、要求とは別に、担当者がネチネチといびられた結果「うつ病」との診断を受け、休職するところまで追い込まれてしまいました。会社内部だけでは対応しきれないと判断して、弁護士への相談に至ったのです。 筆者は会社側から相談を受けた立場ではありましたが、工期がスケジュール通りに進んでおらず、また、いくつか修繕箇所もあったということから、「顧客側の不信感が募っているのも、致し方ない部分もあるのかな…」という印象はありました。
とはいえ、担当者が鬱になるまで追い込むのは…
実際問題、注文住宅の新築工事というのは、とにかく決めることが多く、打ち合わせ担当者・現場監督・具体的な作業を行う職人…と、多人数が現場に関わるため、どうしても業者側の連絡ミスなどが起こりがちです。 とはいえ、担当者が鬱になるまで追い込むのは「カスハラ」ないし「クレーマー」と言ってよいと判断しました。一部ではありますが、担当者とのラインのやり取り等をみても、なかなか苛烈な表現を使われていました。 また、要求する事柄も、確かに不満の残る結果かもしれませんが、少なくとも駐車場のタイルの仕上がり((3))自体は、一般的な工務店の水準からしてもおかしくない、むしろ綺麗にできているといってよい仕上がりであり、外構工事代金を一切支払わない((4))というのは明らかに過剰な要求でした。 上記のケースでは、すでに工事も終わり、外構工事代金を支払ってもらえないという状況でしたので、「カスハラ」「クレーマー」への対応というより、最終代金の回収事案というかたちで介入し、内容証明郵便を送付するなどしたうえで、代金回収業務として進めていきました。 最終的には顧客とも和解し、298万円の代金のうち、8万円を解決金(お詫び代)として差し引き、290万円を回収して一件落着となりました。